「お姉ちゃん!!!なにそのイケメン!!そこんとこ詳しく!!!」
「セドニー!詳しく!そう、詳しく説明しなさい!!?」
鼻息荒く妹と母親が状況説明を申し立てる、そんな彼女たちを背後に男性陣は眉を寄せて渋みを深めていった。そして彼女たちと同じセリフを言うのだ。
「セドニー。その男は誰だ。」
「しっかりと説明してもらおうか。」
ここにきてアズロも気が付いた。兄のアクアもまたセドニーを溺愛しているのだと。セドニーとアズロはお互いに横目で視線を合わせて長くなりそうな家族会議の始まりを覚悟した。やはり自分の存在は着火剤だったとアズロは予感が的中したことに天を仰ぐ。
「俺は…。」
「まずは距離を取れ!!セドニーから離れろ!近すぎる!!」
父親が叫ぶのと同時に兄アクアが二人に近付いてセドニーの両肩を掴んで引き離す。そしてセドニーを庇う様に隠すと肩越しにアズロを睨んだ。あからさまな敵意と殺意にさすがのアズロもどう対応していいものか決めかねて眉が下がった。
ここまでの反応は完全に想定外だった。
「セドニー…正解が分からない…。」
「気安く話しかけるな…っ!」
「落ち着けい!」
暴走気味な父親の頭を叩いたのは母親の平手だ。軽快な音は響きのわりに痛みを伴っていないのだろう、半泣きの父親は痛みよりも自分の行動を咎められたことに涙目になっていた。どうして分かってくれないのだと顔にも背中にも彼を包む空気にもそう書いてあるように見える。
「母さん…だって、あいつセドニーを。」
「まずは話を聞かないと何も分からないでしょうが!アクア、あんたも釣られるんじゃない!」
「釣られたんじゃなくて~お兄ちゃんは自主的にやってるんだと思うよ。シスコンだし。」
「ああ…そうだったわ。」
叱られて萎れた父親、シスコンだと呆れられて傷ついた兄、傷心の男性陣をさて置いて女性陣は仕切り直しと言わんばかりに食卓へつくようセドニーとアズロを促した。意図的に隣に座らされたが、それが面白くない父と兄がアズロを睨む。
「しつこいと嫌われるよ。」
最年少マリンの一言が堪えたのか二人は静かに目を閉じた。どうやら耐えることと、視界に入れないことで自分を諫めることにしたらしい。
「改めて、俺の名はアズロ。セドニーの魔獣で本来の姿は黒ヒョウだ。」
「黒ヒョウは魔獣の中でも階級は高いらしくて…すごいよね。」
改めたアズロの自己紹介は見る人からすれば少し上からの物言いに聞こえる、そう感じたセドニーはすぐさま補足のような形で言葉を添えた。父や兄的にはもう少し下から来てほしいのだろうが、魔獣であるアズロにそれは通じる筈もない。案の定こめかみ辺りがひくひくと動いた父と兄はセドニーの補足に怒りを抑えたようだった。
しかしそこから沈黙が生まれる。アズロとしてもこれ以上何を言えばいいのか分からず、とりあえずの自己紹介が終了してしまったのだ。間が持たないと危機を感じたセドニーが口を開こうとするが、好奇心いっぱいの妹マリンによって沈黙の危機は救われた。
「アズロさんって、年齢はいくつなんですか?」
「歳…は分からない。セドニーより上だとは思うが…。」
「じゃあ趣味は?特技は?家族構成は?お姉ちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
「「「は!?」」」
マリンの言葉に強い反応を示したのはセドニーだけではなかったようだ。父も兄もセドニーも目を大きく開いて全力で何を言っているのだとマリンを見た。しかし当のマリンはどこ吹く風だ。
にこにこ笑顔でアズロからの答えを心待ちにしている。
「マリン!ちょっとアズロが困ってるでしょ!?」
「だって~みんな聞きたいと思うんだけどな~?」
「俺は少しの興味もない!」
「お父さん!」
セドニーが止めたところでマリンに悪びれる様子はない。それどころかまた違った方向に盛り上がっていく自分の家族にセドニーは頭が痛くなってきた。
「セドニー!詳しく!そう、詳しく説明しなさい!!?」
鼻息荒く妹と母親が状況説明を申し立てる、そんな彼女たちを背後に男性陣は眉を寄せて渋みを深めていった。そして彼女たちと同じセリフを言うのだ。
「セドニー。その男は誰だ。」
「しっかりと説明してもらおうか。」
ここにきてアズロも気が付いた。兄のアクアもまたセドニーを溺愛しているのだと。セドニーとアズロはお互いに横目で視線を合わせて長くなりそうな家族会議の始まりを覚悟した。やはり自分の存在は着火剤だったとアズロは予感が的中したことに天を仰ぐ。
「俺は…。」
「まずは距離を取れ!!セドニーから離れろ!近すぎる!!」
父親が叫ぶのと同時に兄アクアが二人に近付いてセドニーの両肩を掴んで引き離す。そしてセドニーを庇う様に隠すと肩越しにアズロを睨んだ。あからさまな敵意と殺意にさすがのアズロもどう対応していいものか決めかねて眉が下がった。
ここまでの反応は完全に想定外だった。
「セドニー…正解が分からない…。」
「気安く話しかけるな…っ!」
「落ち着けい!」
暴走気味な父親の頭を叩いたのは母親の平手だ。軽快な音は響きのわりに痛みを伴っていないのだろう、半泣きの父親は痛みよりも自分の行動を咎められたことに涙目になっていた。どうして分かってくれないのだと顔にも背中にも彼を包む空気にもそう書いてあるように見える。
「母さん…だって、あいつセドニーを。」
「まずは話を聞かないと何も分からないでしょうが!アクア、あんたも釣られるんじゃない!」
「釣られたんじゃなくて~お兄ちゃんは自主的にやってるんだと思うよ。シスコンだし。」
「ああ…そうだったわ。」
叱られて萎れた父親、シスコンだと呆れられて傷ついた兄、傷心の男性陣をさて置いて女性陣は仕切り直しと言わんばかりに食卓へつくようセドニーとアズロを促した。意図的に隣に座らされたが、それが面白くない父と兄がアズロを睨む。
「しつこいと嫌われるよ。」
最年少マリンの一言が堪えたのか二人は静かに目を閉じた。どうやら耐えることと、視界に入れないことで自分を諫めることにしたらしい。
「改めて、俺の名はアズロ。セドニーの魔獣で本来の姿は黒ヒョウだ。」
「黒ヒョウは魔獣の中でも階級は高いらしくて…すごいよね。」
改めたアズロの自己紹介は見る人からすれば少し上からの物言いに聞こえる、そう感じたセドニーはすぐさま補足のような形で言葉を添えた。父や兄的にはもう少し下から来てほしいのだろうが、魔獣であるアズロにそれは通じる筈もない。案の定こめかみ辺りがひくひくと動いた父と兄はセドニーの補足に怒りを抑えたようだった。
しかしそこから沈黙が生まれる。アズロとしてもこれ以上何を言えばいいのか分からず、とりあえずの自己紹介が終了してしまったのだ。間が持たないと危機を感じたセドニーが口を開こうとするが、好奇心いっぱいの妹マリンによって沈黙の危機は救われた。
「アズロさんって、年齢はいくつなんですか?」
「歳…は分からない。セドニーより上だとは思うが…。」
「じゃあ趣味は?特技は?家族構成は?お姉ちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
「「「は!?」」」
マリンの言葉に強い反応を示したのはセドニーだけではなかったようだ。父も兄もセドニーも目を大きく開いて全力で何を言っているのだとマリンを見た。しかし当のマリンはどこ吹く風だ。
にこにこ笑顔でアズロからの答えを心待ちにしている。
「マリン!ちょっとアズロが困ってるでしょ!?」
「だって~みんな聞きたいと思うんだけどな~?」
「俺は少しの興味もない!」
「お父さん!」
セドニーが止めたところでマリンに悪びれる様子はない。それどころかまた違った方向に盛り上がっていく自分の家族にセドニーは頭が痛くなってきた。