「あの…やっぱりアズロもそう思うの?」
「そうだな…きっと近いうちにそう思う気がする。」
聞きたいような聞きたくないような、それでいて頷いてほしいと妙な期待を抱いた質問は少しゆるめに肯定される。
「近いうち?」
「ここはセドニーの師の領域で間借りさせてもらっているものだから。いつかセドニーが自分の空間を構えたときは、きっと俺たち以外誰一人として踏み入れることを許さないと思う。」
どこか自信満々に答えるアズロにセドニーは顔を赤くすることしかできなかった。よりによってしっかりと目と目があった時に告げられたのだ、こんなに心を鷲掴みにされる言葉はないだろう。
本の中の出来事でしかなかった言葉が生きて自分の方に向かってくる。こんな台詞を面と向かって言われて心を揺さぶられない人なんているのだろうか。
なんて独占欲。いやそれだけじゃない。
「なんて破壊力…。」
「ああ、俺は強い。」
セドニーの言葉をどう受け取ったのか、アズロは当然だと言った態度で力強く頷いた。それにどこか得意げで少し印象が幼く見える。
「アズロは強いの?」
「ああ。群れの若い連中の中で一番だった。さすがに父には挑まなかったが認めてもらえるだけの強さはある。」
強く拳を握るのは自分の力を誇示するためだ。その腕の力強さにセドニーはアズロの言葉の信憑性があると素直に頷いた。
「挑まなかったのはどうして?」
「…群れの主である父に挑んで、もし勝ってしまったら俺は群れの主にならないといけなくなる。もし負ければ群れから追い出されることもある。」
「…そうなの?」
「だから挑まなかった。どちらにしても面倒なことになるからな。」
アズロは黒ヒョウだ。そこはきっと人間の世界とは違うルールがあって、アズロはその中で生きてきたのだと再認識した。それなのに彼はセドニーの生活の事をよく理解している。
「アズロは…ずっと魔女について勉強してたんだ?」
「ああ。父からも魔女を探すならそうしろと言われていた。」
「アズロのお父さんは魔女を探さなかったの?」
「母がいたからな。でも一族の中に魔女と生きることを選んだ者は沢山いたから俺たちの選択は自由だった。」
「そうなんだ…。」
食器の片付けも終わった、あとはそれぞれの部屋に戻ってゆっくり今日の出来事を振り返る時間を予定だったのになんとなく離れがたい空気がそこにあって。いつの間にか二人は向かい合ってソファに座り互いの話に耳を傾けていた。
アズロは魔女と共に生きる同胞に会ったこともあるという。それは偶然の出来事だったらしいが、貴重な話を聞けたらしい。自身の存在に誇りを持ち、互いに唯一の存在だと認め合う関係性に強く胸を打たれたのだ。
「何よりその黒ヒョウは強かった。手合わせをしなくても伝わってくる程に…俺では絶対に敵わないとすぐに分かった。」
肌で感じるそのものが放つ気配は殺気であったり威圧であったり癒しであったり、様々に色を変えるがアズロが感じ取ったのは魔力量とその質だった。なによりその余裕に満ちた笑みが圧倒的な高みを見せつけてきたのだ。
それに嫉妬なんて抱くはずがない。ただ憧れただけだった。
「全てに手を抜いてはいけない。じゃないとあそこには辿り着けない。だから俺は魔女の事も学んだ。…ただそれだけだ。」
現にあの黒ヒョウの横にいた魔女もまた彼にふさわしい空気を持っていたから。憧れたのなら、近付きたいのなら学ぶべきだとアズロはそう考えたのだ。もちろんそこには黒ヒョウとしての強さは必要不可欠だった。
いつかあの黒ヒョウと対峙した時に勝てるような自分じゃないとアズロは対の魔女を守れないのだから。
「出来る限りの努力はした。黒ヒョウは魔獣の中でもより強くいなければいけないと言われていたから、そういった意地もあるけどな。だからこそ俺は誰よりも強いと自信を持って言える。」
「すごい…。」
「だからセドニーは安心してまず見習い課程を修了させよう。」
絶対に大丈夫だ、そうアズロの目が態度がセドニーに力を与えてくれた。この人は全力で自分を支えようとしてくれている、そう感じられてセドニーは安堵を覚えた。
「ありがとう…アズロ。」
「そうだな…きっと近いうちにそう思う気がする。」
聞きたいような聞きたくないような、それでいて頷いてほしいと妙な期待を抱いた質問は少しゆるめに肯定される。
「近いうち?」
「ここはセドニーの師の領域で間借りさせてもらっているものだから。いつかセドニーが自分の空間を構えたときは、きっと俺たち以外誰一人として踏み入れることを許さないと思う。」
どこか自信満々に答えるアズロにセドニーは顔を赤くすることしかできなかった。よりによってしっかりと目と目があった時に告げられたのだ、こんなに心を鷲掴みにされる言葉はないだろう。
本の中の出来事でしかなかった言葉が生きて自分の方に向かってくる。こんな台詞を面と向かって言われて心を揺さぶられない人なんているのだろうか。
なんて独占欲。いやそれだけじゃない。
「なんて破壊力…。」
「ああ、俺は強い。」
セドニーの言葉をどう受け取ったのか、アズロは当然だと言った態度で力強く頷いた。それにどこか得意げで少し印象が幼く見える。
「アズロは強いの?」
「ああ。群れの若い連中の中で一番だった。さすがに父には挑まなかったが認めてもらえるだけの強さはある。」
強く拳を握るのは自分の力を誇示するためだ。その腕の力強さにセドニーはアズロの言葉の信憑性があると素直に頷いた。
「挑まなかったのはどうして?」
「…群れの主である父に挑んで、もし勝ってしまったら俺は群れの主にならないといけなくなる。もし負ければ群れから追い出されることもある。」
「…そうなの?」
「だから挑まなかった。どちらにしても面倒なことになるからな。」
アズロは黒ヒョウだ。そこはきっと人間の世界とは違うルールがあって、アズロはその中で生きてきたのだと再認識した。それなのに彼はセドニーの生活の事をよく理解している。
「アズロは…ずっと魔女について勉強してたんだ?」
「ああ。父からも魔女を探すならそうしろと言われていた。」
「アズロのお父さんは魔女を探さなかったの?」
「母がいたからな。でも一族の中に魔女と生きることを選んだ者は沢山いたから俺たちの選択は自由だった。」
「そうなんだ…。」
食器の片付けも終わった、あとはそれぞれの部屋に戻ってゆっくり今日の出来事を振り返る時間を予定だったのになんとなく離れがたい空気がそこにあって。いつの間にか二人は向かい合ってソファに座り互いの話に耳を傾けていた。
アズロは魔女と共に生きる同胞に会ったこともあるという。それは偶然の出来事だったらしいが、貴重な話を聞けたらしい。自身の存在に誇りを持ち、互いに唯一の存在だと認め合う関係性に強く胸を打たれたのだ。
「何よりその黒ヒョウは強かった。手合わせをしなくても伝わってくる程に…俺では絶対に敵わないとすぐに分かった。」
肌で感じるそのものが放つ気配は殺気であったり威圧であったり癒しであったり、様々に色を変えるがアズロが感じ取ったのは魔力量とその質だった。なによりその余裕に満ちた笑みが圧倒的な高みを見せつけてきたのだ。
それに嫉妬なんて抱くはずがない。ただ憧れただけだった。
「全てに手を抜いてはいけない。じゃないとあそこには辿り着けない。だから俺は魔女の事も学んだ。…ただそれだけだ。」
現にあの黒ヒョウの横にいた魔女もまた彼にふさわしい空気を持っていたから。憧れたのなら、近付きたいのなら学ぶべきだとアズロはそう考えたのだ。もちろんそこには黒ヒョウとしての強さは必要不可欠だった。
いつかあの黒ヒョウと対峙した時に勝てるような自分じゃないとアズロは対の魔女を守れないのだから。
「出来る限りの努力はした。黒ヒョウは魔獣の中でもより強くいなければいけないと言われていたから、そういった意地もあるけどな。だからこそ俺は誰よりも強いと自信を持って言える。」
「すごい…。」
「だからセドニーは安心してまず見習い課程を修了させよう。」
絶対に大丈夫だ、そうアズロの目が態度がセドニーに力を与えてくれた。この人は全力で自分を支えようとしてくれている、そう感じられてセドニーは安堵を覚えた。
「ありがとう…アズロ。」