セドニー以外にも、ラリマやタイガが同じ様に驚いた様子で二人のセドニーを見つめていた。しかし確信を得たアズロだけが口元を満足げに上げる。
「私…?」
占いの中、宙に手を伸ばしたまま戸惑いの声を漏らしたセドニーの手を取ったのはアズロだった。彼女はアズロの未来を探しに来たセドニー、そんな彼女と掌を合わせて笑みを深めた。
占い中のセドニーの肩には左手を、そして占いの答えを求めて現れたセドニーの手には右手を差し出してアズロが二人の真ん中に立ったのだ。
「貴女こそが俺の魔女だ、セドニー。」
力のこもった声を放てば、どこからか現れたセドニーは役目を終えたかのように光の粒となって消えてしまった。そしてその瞬間に水晶の光も鎮まっていく。
占いが終わったのだ、閉じていく光を見つめながらセドニーは胸の内で呟いた。肩に乗せられたアズロの手に力が入るとセドニーはゆっくりと顔を上げる。
「間違いない。俺の対の魔女。」
そう言うなりアズロはセドニーの横に膝をついて身を屈め、彼女の左手をとって手の甲に静かに口づけた。
射抜くような力強い瞳はセドニーを捉えて離さない。
「…っちょっと!あの!」
こういった扱いに全く免疫のないセドニーはただ顔を赤らめて混乱するばかりだった。目も頭も回しているセドニーをよそにタイガが冷静な声で呟く。
「これほどまでの強い干渉が出来るとは…稀に見る才だな。」
「ええ。…ここよりずっと離れたのどかな村で見つけたときは本当に驚いたわ。」
「精霊の騒ぎの時か。」
「そう。あの子の周りにいた精霊が私に知らせてくれたのよ。セドニーを守ってあげてほしいと。」
二人の会話はセドニーとアズロの耳にも届いていた。初めて聞く自分がここに来た経緯に思わずセドニーも反応を示して耳を疑う。
「うちの村に来たのは偶然じゃなかったんですか?薬草を探す旅をしていたと…。」
「本当はね、精霊たちが私を貴女の所まで呼んだの。強い魔力を持った子がいるから保護してやってくれって。」
「…保護?」
「魔力が暴走したり、厄介ごとに巻き込まれないようにね。」
「知りませんでした…。」
そう瞬きを重ねるセドニーにラリマは微笑みを向けた。その眼差しはいつものようにセドニーを慈しむ優しいものだ。
「でも…そうね、私も驚いたわ。これだけ強い干渉を見せるなんて…ほぼ実態に近い姿を見せれるなんて信じられないわ。確かにこれは焦る筈よね。」
最後の方の言葉はアズロへの共感を示しているため、アズロは頷くことでそれに答えた。その言葉の意味が分からないセドニーはただ首を傾げるばかりだ。
「強い力は狙われやすいものよ。自分の対となる魔女であれば、ましてや見習いであるなら尚更自分が近くで守らないといけないと思ったんでしょう。下心よりも善意…使命感のようなものが強かったという事ね。」
「当然だ。」
ラリマの言葉に被せるようにアズロは力強く肯定した。その姿に肩を竦めたのはラリマだ。
「でもアレだと誤解されても仕方ないわよ。」
「…反省している。」
「セドニーは可愛いの。これまで私がどれだけ悪い虫が付かないようにしていたか!ねえ、タイガ!?」
「駆り出されたのは主に俺だ。」
そういえば魔法屋で従業員狙いの客が来たときは何故かいいタイミングで支配人が店頭に出ている時が多かったとセドニーは思い出した。高身長で無表情の美形が睨みを利かすと大抵の客は引いていったものだ。あれはいつも誰かが支配人を呼びに行っていたのだと思っていたが、まさかのラリマ指示とは思わなかった。
おかげさまで治安のいい職場だとみんなでよく和んでいたのだ。
「とにかく、これ以上あなた達の関係に私が口を出すことはしないとして…セドニー、貴女の見習い期間が早く終わるように急ぎましょう。」
「は、はい!」
「あのアパートでは危ないかもしれないわね。今日から私の屋敷に住み込みなさい。」
「私…?」
占いの中、宙に手を伸ばしたまま戸惑いの声を漏らしたセドニーの手を取ったのはアズロだった。彼女はアズロの未来を探しに来たセドニー、そんな彼女と掌を合わせて笑みを深めた。
占い中のセドニーの肩には左手を、そして占いの答えを求めて現れたセドニーの手には右手を差し出してアズロが二人の真ん中に立ったのだ。
「貴女こそが俺の魔女だ、セドニー。」
力のこもった声を放てば、どこからか現れたセドニーは役目を終えたかのように光の粒となって消えてしまった。そしてその瞬間に水晶の光も鎮まっていく。
占いが終わったのだ、閉じていく光を見つめながらセドニーは胸の内で呟いた。肩に乗せられたアズロの手に力が入るとセドニーはゆっくりと顔を上げる。
「間違いない。俺の対の魔女。」
そう言うなりアズロはセドニーの横に膝をついて身を屈め、彼女の左手をとって手の甲に静かに口づけた。
射抜くような力強い瞳はセドニーを捉えて離さない。
「…っちょっと!あの!」
こういった扱いに全く免疫のないセドニーはただ顔を赤らめて混乱するばかりだった。目も頭も回しているセドニーをよそにタイガが冷静な声で呟く。
「これほどまでの強い干渉が出来るとは…稀に見る才だな。」
「ええ。…ここよりずっと離れたのどかな村で見つけたときは本当に驚いたわ。」
「精霊の騒ぎの時か。」
「そう。あの子の周りにいた精霊が私に知らせてくれたのよ。セドニーを守ってあげてほしいと。」
二人の会話はセドニーとアズロの耳にも届いていた。初めて聞く自分がここに来た経緯に思わずセドニーも反応を示して耳を疑う。
「うちの村に来たのは偶然じゃなかったんですか?薬草を探す旅をしていたと…。」
「本当はね、精霊たちが私を貴女の所まで呼んだの。強い魔力を持った子がいるから保護してやってくれって。」
「…保護?」
「魔力が暴走したり、厄介ごとに巻き込まれないようにね。」
「知りませんでした…。」
そう瞬きを重ねるセドニーにラリマは微笑みを向けた。その眼差しはいつものようにセドニーを慈しむ優しいものだ。
「でも…そうね、私も驚いたわ。これだけ強い干渉を見せるなんて…ほぼ実態に近い姿を見せれるなんて信じられないわ。確かにこれは焦る筈よね。」
最後の方の言葉はアズロへの共感を示しているため、アズロは頷くことでそれに答えた。その言葉の意味が分からないセドニーはただ首を傾げるばかりだ。
「強い力は狙われやすいものよ。自分の対となる魔女であれば、ましてや見習いであるなら尚更自分が近くで守らないといけないと思ったんでしょう。下心よりも善意…使命感のようなものが強かったという事ね。」
「当然だ。」
ラリマの言葉に被せるようにアズロは力強く肯定した。その姿に肩を竦めたのはラリマだ。
「でもアレだと誤解されても仕方ないわよ。」
「…反省している。」
「セドニーは可愛いの。これまで私がどれだけ悪い虫が付かないようにしていたか!ねえ、タイガ!?」
「駆り出されたのは主に俺だ。」
そういえば魔法屋で従業員狙いの客が来たときは何故かいいタイミングで支配人が店頭に出ている時が多かったとセドニーは思い出した。高身長で無表情の美形が睨みを利かすと大抵の客は引いていったものだ。あれはいつも誰かが支配人を呼びに行っていたのだと思っていたが、まさかのラリマ指示とは思わなかった。
おかげさまで治安のいい職場だとみんなでよく和んでいたのだ。
「とにかく、これ以上あなた達の関係に私が口を出すことはしないとして…セドニー、貴女の見習い期間が早く終わるように急ぎましょう。」
「は、はい!」
「あのアパートでは危ないかもしれないわね。今日から私の屋敷に住み込みなさい。」