「セドニーったら、真っ赤になっちゃって可愛い。でも…私たちは恋人、というものではないわね。」
「…そうですよね。」
「そうね、人間的な関係性でいえば…夫婦に近いわよね、タイガ。」
「え!?」
衝撃発言に思い切り顔を上げればラリマと見つめあうタイガが頷いているところだったのだ。
夫婦のような関係、そう言われてから改めて二人を見れば確かにそうかもしれないと妙に納得した。ただ頷いているだけのタイガが愛らしく見えてくるし、二人は恋人よりももっと深くて安定している繋がりがあるように見えたのだ。
「魔獣は対の魔女を深く求め、その全てで守ってくれるわ。全ての魔獣が魔女を求める訳ではないけれど…魔女を求める魔獣は対となる相手を自分の命と同等に扱ってくれる。それほどまでに深い意味を持つ相手なの。」
その言葉の重さが、思いがセドニーの全身に広がっていく。背後に感じるアズロの気配に妙な感覚を抱いてしまう。あの強い眼差しを見ずともすぐに思い出せるぐらい印象深かったのだ。
アズロは対の魔女を求めている。それが自分であると、セドニーは告げられたのだ。
「彼が占って欲しいというのならしてあげるといいわ。セドニー、貴女が決めなさい。」
そう言ってラリマは手をかざしセドニーとの間にあるローテーブルの上に水晶玉を空間から呼び出した。これはラリマが使用している水晶なのだとすぐに気づいてラリマに視線を向ける。
ラリマは微笑むだけで何も言葉はくれなかった。動揺しながらもアズロを見上げれば、その目はまっすぐに求めてくる。
「う…占うって言っても何を占ったらいいの…?」
「何でも。」
「何でもって言われても。」
「じゃあ俺の未来を。俺の隣に誰がいるのか。」
それはセドニー、貴女しかいない。
そんな言葉を告げられた訳ではないのに、何故か頭の中に浮かんで顔が真っ赤になった。恥ずかしさを振り払うように慌てて視線を外すとセドニーは水晶玉に向き合う。
占ってしまったら、どうなるんだろう。
手をかざす前、不安に押しつぶされそうになって師匠を見上げると彼女は微笑んだまま目の前に座っていた。
大丈夫、そう声をかけられた気がして心が落ち着いていくのが分かる。まずはやってみなさい、不安になった時いつもそうやって声をかけてくれたのを思い出した。
「こんにちは、水晶。…少しだけ貴方の力を貸してね。」
必要ないかもしれないがセドニーは水晶に言葉をかけた。すると水晶はセドニーの声に反応を示して淡く光を放つ。
セドニーが何に対しても敬意を払うのは師匠であるラリマの教えでもあった。
ラリマ自身も何かの力を借りる時は必ず言葉を送るのだ。たとえそれが毎日使う魔具であったとしても、その場限りのものだったとしても。
「アズロの未来…。」
この先にアズロの傍に誰がいるのか、実質の彼の魔女は誰なのか、占いたい事を胸の内で唱えてセドニーは水晶の中に答えを求めた。
水しぶきが起こる、水滴が踊る、波紋が絵を描く、そして穏やかに揺らめく水面が浮かぶ。
ああ、水の精霊が力を貸してくれた。そう感じると共にセドニーの脳裏に風景画浮かんできた。
深い水の中、かきわけて進んだ先にある答えを求めていく。
この先に答えがあるのだ、その思いで両手を懸命に動かして進んだ。その水の向こう、この先、水面だろうかキラキラと光が反射する場所へ手を伸ばす。
そして手が空を切った。
ああ、たどり着いたんだ。そう感じて促されるように顔を上げると、目の前の景色に思わず息を飲んだ。
「え?」
それは瞼の裏の出来事。しかし占いの途中だというのに何かから誘われるような形で弾くように目を開けたセドニーは水晶から視線を宙へと変える。
そこにいたのは宙から手を伸ばして何かを求める自分の姿だった。
「え?」
この声は2つの同じ音が重なったもの。おそらく2人のセドニーが同時に放った声だ。
お互いにこの状況を把握しきれず戸惑いの表情を浮かべている。
「…そうですよね。」
「そうね、人間的な関係性でいえば…夫婦に近いわよね、タイガ。」
「え!?」
衝撃発言に思い切り顔を上げればラリマと見つめあうタイガが頷いているところだったのだ。
夫婦のような関係、そう言われてから改めて二人を見れば確かにそうかもしれないと妙に納得した。ただ頷いているだけのタイガが愛らしく見えてくるし、二人は恋人よりももっと深くて安定している繋がりがあるように見えたのだ。
「魔獣は対の魔女を深く求め、その全てで守ってくれるわ。全ての魔獣が魔女を求める訳ではないけれど…魔女を求める魔獣は対となる相手を自分の命と同等に扱ってくれる。それほどまでに深い意味を持つ相手なの。」
その言葉の重さが、思いがセドニーの全身に広がっていく。背後に感じるアズロの気配に妙な感覚を抱いてしまう。あの強い眼差しを見ずともすぐに思い出せるぐらい印象深かったのだ。
アズロは対の魔女を求めている。それが自分であると、セドニーは告げられたのだ。
「彼が占って欲しいというのならしてあげるといいわ。セドニー、貴女が決めなさい。」
そう言ってラリマは手をかざしセドニーとの間にあるローテーブルの上に水晶玉を空間から呼び出した。これはラリマが使用している水晶なのだとすぐに気づいてラリマに視線を向ける。
ラリマは微笑むだけで何も言葉はくれなかった。動揺しながらもアズロを見上げれば、その目はまっすぐに求めてくる。
「う…占うって言っても何を占ったらいいの…?」
「何でも。」
「何でもって言われても。」
「じゃあ俺の未来を。俺の隣に誰がいるのか。」
それはセドニー、貴女しかいない。
そんな言葉を告げられた訳ではないのに、何故か頭の中に浮かんで顔が真っ赤になった。恥ずかしさを振り払うように慌てて視線を外すとセドニーは水晶玉に向き合う。
占ってしまったら、どうなるんだろう。
手をかざす前、不安に押しつぶされそうになって師匠を見上げると彼女は微笑んだまま目の前に座っていた。
大丈夫、そう声をかけられた気がして心が落ち着いていくのが分かる。まずはやってみなさい、不安になった時いつもそうやって声をかけてくれたのを思い出した。
「こんにちは、水晶。…少しだけ貴方の力を貸してね。」
必要ないかもしれないがセドニーは水晶に言葉をかけた。すると水晶はセドニーの声に反応を示して淡く光を放つ。
セドニーが何に対しても敬意を払うのは師匠であるラリマの教えでもあった。
ラリマ自身も何かの力を借りる時は必ず言葉を送るのだ。たとえそれが毎日使う魔具であったとしても、その場限りのものだったとしても。
「アズロの未来…。」
この先にアズロの傍に誰がいるのか、実質の彼の魔女は誰なのか、占いたい事を胸の内で唱えてセドニーは水晶の中に答えを求めた。
水しぶきが起こる、水滴が踊る、波紋が絵を描く、そして穏やかに揺らめく水面が浮かぶ。
ああ、水の精霊が力を貸してくれた。そう感じると共にセドニーの脳裏に風景画浮かんできた。
深い水の中、かきわけて進んだ先にある答えを求めていく。
この先に答えがあるのだ、その思いで両手を懸命に動かして進んだ。その水の向こう、この先、水面だろうかキラキラと光が反射する場所へ手を伸ばす。
そして手が空を切った。
ああ、たどり着いたんだ。そう感じて促されるように顔を上げると、目の前の景色に思わず息を飲んだ。
「え?」
それは瞼の裏の出来事。しかし占いの途中だというのに何かから誘われるような形で弾くように目を開けたセドニーは水晶から視線を宙へと変える。
そこにいたのは宙から手を伸ばして何かを求める自分の姿だった。
「え?」
この声は2つの同じ音が重なったもの。おそらく2人のセドニーが同時に放った声だ。
お互いにこの状況を把握しきれず戸惑いの表情を浮かべている。