「あらまあ。」
事のあらましを全て聞いたセドニーの師匠ラリマが発したのはただその一言だった。
いつも通りのゆったりとした佇まいで頬に手を当て優しい頷きを繰り返す。
明朝、それは確かにその通りだった。
アズロは魔法屋に出勤してきたセドニーを待ち伏せしていたようで、彼女が魔法屋の前に着いた瞬間に声をかけられたのだ。
人間の姿で昨夜と同じように金色の目で真っすぐにセドニーを見つめながら。
その姿を見た瞬間にセドニーは特にあがいていた訳ではないが全てを諦めた。そしてここで待つように告げると店内にいる師匠のもとへと向かったのだ。
そしてこれまで起きたこと全てを店内にあるラリマの部屋で説明し終えてからの、「あらまあ。」だった。
「色んなことが起きてビックリしたのね。セドニーったら顔が強張ってる。」
「まだよく分かっていなくて…。」
「そうよね。」
ふふふと笑いながらラリマが腰かけていたソファから立ち上がった。
そして部屋の真ん中で立ったままのセドニーに近寄りそっと頭を撫でてやる。
「連れていらっしゃい。礼節をわきまえた賢い子じゃないの。」
「…そう、でしょうか。」
「ええ。魔女の師弟関係そっちのけで目的を達成させる子もたくさんいるわ。それに早くしないともっと騒ぎになるかも。」
「もっと騒ぎ?」
師匠の言い分が理解できず首を傾げるセドニーに何も答えず、ラリマは微笑むと耳を澄ますように手をあてた。
「ちょっと見た!?すっごいイケメンが店の前にいるんだけど!!!」
「見た!何あれ!お客さんなの!?」
「やだ、かっこいい!!」
「ねえ、どっちのお客さんなの?!接客したいー!!」
聞こえてきたのは同僚たちの興奮する叫び声、彼女たちのいう人物に心当たりがあるセドニーは騒ぎを聞いて顔を真っ青に染めた。今だけでも大した騒ぎではないかと。
「すぐに連れてきます!!」
「待ってるわ~。」
断りを入れてすぐにセドニーは表へと駆けていった。腕を組んで店の壁にもたれていたアズロは同僚以外にも店の前を通る人々から大いに注目を浴びていたようだ。忘れていた、あまりの衝撃に頭からすっかり抜けてしまっていた。
「あ、許可は貰えたのか?」
セドニーの姿を見て僅かに笑みを浮かべただけでその場にいた女性陣の黄色い声が上がる。確かにそうだ、周りの反応を待たずしても客観的に見ればアズロは随分と整った容姿をしていたのだと気付かされた。昨日は混乱していて全く意識をしていなかったが、背丈もあってしっかりとした身体つきに整った顔はなんて攻撃力だろうか。
「セドニー?」
アズロが名を呼んだことで同僚がセドニーの知り合いだと認識したざわめきが聞こえてくる。慌ててアズロの手を掴むと逃げるように店の中に連れ込んで師匠の部屋へと引っ張っていった。
「え、セドニーの知り合いなの!?」
「どういう事!?」
同僚の問いかけにも一切答えずセドニーは一目散に目的地へと進み続けたのだ。
「猫の方が良かったか?」
「そうかもしれない!」
そんな会話をしながら勢いのまま師匠の部屋の扉を叩いた。名乗りを上げれば中から入室の許可の声をかけられ、セドニーは深呼吸をする。
ここに師がいるのかと問われセドニーは頷いた。アズロも真剣な顔つきに変わり顎を引く。
「失礼します。」
扉を開けるとラリマは先程までと同じように彼女のお気に入りのソファに腰かけてこちらを見ていた。ただ違うのは彼女の傍に魔法屋の支配人であるタイガが控えていたのだ。
いつの間に、そんな言葉を飲み込んでセドニーはアズロと共に部屋の中へ数歩進んだ。ラリマの笑みが歓迎の意を示していると信じてセドニーは斜め後ろに控えているアズロを紹介するように手を差し出した。
「彼が…アズロです。」
事のあらましを全て聞いたセドニーの師匠ラリマが発したのはただその一言だった。
いつも通りのゆったりとした佇まいで頬に手を当て優しい頷きを繰り返す。
明朝、それは確かにその通りだった。
アズロは魔法屋に出勤してきたセドニーを待ち伏せしていたようで、彼女が魔法屋の前に着いた瞬間に声をかけられたのだ。
人間の姿で昨夜と同じように金色の目で真っすぐにセドニーを見つめながら。
その姿を見た瞬間にセドニーは特にあがいていた訳ではないが全てを諦めた。そしてここで待つように告げると店内にいる師匠のもとへと向かったのだ。
そしてこれまで起きたこと全てを店内にあるラリマの部屋で説明し終えてからの、「あらまあ。」だった。
「色んなことが起きてビックリしたのね。セドニーったら顔が強張ってる。」
「まだよく分かっていなくて…。」
「そうよね。」
ふふふと笑いながらラリマが腰かけていたソファから立ち上がった。
そして部屋の真ん中で立ったままのセドニーに近寄りそっと頭を撫でてやる。
「連れていらっしゃい。礼節をわきまえた賢い子じゃないの。」
「…そう、でしょうか。」
「ええ。魔女の師弟関係そっちのけで目的を達成させる子もたくさんいるわ。それに早くしないともっと騒ぎになるかも。」
「もっと騒ぎ?」
師匠の言い分が理解できず首を傾げるセドニーに何も答えず、ラリマは微笑むと耳を澄ますように手をあてた。
「ちょっと見た!?すっごいイケメンが店の前にいるんだけど!!!」
「見た!何あれ!お客さんなの!?」
「やだ、かっこいい!!」
「ねえ、どっちのお客さんなの?!接客したいー!!」
聞こえてきたのは同僚たちの興奮する叫び声、彼女たちのいう人物に心当たりがあるセドニーは騒ぎを聞いて顔を真っ青に染めた。今だけでも大した騒ぎではないかと。
「すぐに連れてきます!!」
「待ってるわ~。」
断りを入れてすぐにセドニーは表へと駆けていった。腕を組んで店の壁にもたれていたアズロは同僚以外にも店の前を通る人々から大いに注目を浴びていたようだ。忘れていた、あまりの衝撃に頭からすっかり抜けてしまっていた。
「あ、許可は貰えたのか?」
セドニーの姿を見て僅かに笑みを浮かべただけでその場にいた女性陣の黄色い声が上がる。確かにそうだ、周りの反応を待たずしても客観的に見ればアズロは随分と整った容姿をしていたのだと気付かされた。昨日は混乱していて全く意識をしていなかったが、背丈もあってしっかりとした身体つきに整った顔はなんて攻撃力だろうか。
「セドニー?」
アズロが名を呼んだことで同僚がセドニーの知り合いだと認識したざわめきが聞こえてくる。慌ててアズロの手を掴むと逃げるように店の中に連れ込んで師匠の部屋へと引っ張っていった。
「え、セドニーの知り合いなの!?」
「どういう事!?」
同僚の問いかけにも一切答えずセドニーは一目散に目的地へと進み続けたのだ。
「猫の方が良かったか?」
「そうかもしれない!」
そんな会話をしながら勢いのまま師匠の部屋の扉を叩いた。名乗りを上げれば中から入室の許可の声をかけられ、セドニーは深呼吸をする。
ここに師がいるのかと問われセドニーは頷いた。アズロも真剣な顔つきに変わり顎を引く。
「失礼します。」
扉を開けるとラリマは先程までと同じように彼女のお気に入りのソファに腰かけてこちらを見ていた。ただ違うのは彼女の傍に魔法屋の支配人であるタイガが控えていたのだ。
いつの間に、そんな言葉を飲み込んでセドニーはアズロと共に部屋の中へ数歩進んだ。ラリマの笑みが歓迎の意を示していると信じてセドニーは斜め後ろに控えているアズロを紹介するように手を差し出した。
「彼が…アズロです。」