わたしの頭が狂ったとしてもそんなことを良しとは出来ない。

「……良くないから、一緒には居られません」
「分かった。じゃあ明日にでも退職願を出してくる」
「どうしてそうなるんです」
「俺が、君と一緒に居たいから」

わたしより先に、絹笠さんの頭が狂うのが先なのか。

手首から掌に手が移る。指先を握られ、わたしは一人足元へと視線を落とした。

「正直、よく分かんないです。絹笠さんのこと」
「何でも答えるけど」
「いや、そう……なんですけど」

そうではなく。

「わたしが、絹笠を好きになって付き合いたいのは、分かるんですよ」