絹笠さんの顔は相変わらず険しかったが、それがなんだ、と表情が言っている。
「店を畳むつもりも、この先ありませんし」
「結婚しても続ければ良い」
「でも、一人では限界があるので……」
「俺はいつでも仕事を辞める」
「は!?」
部屋の中でわたしの声が響く。
絹笠さんはわたしの手首を握り返した。
「それで良いのか?」
尋ねられ、わたしは口を開きかけ閉じて、結局開いた。
「良いわけないです」
今のキャリアにつくまでの絹笠さんの努力なんて、わたしには少しも分からない。それを投げ捨てて、クリーニング屋を一緒にやって欲しい、なんて。