これで分身しなくて良くなる、と安堵しているところにかかってきた電話。
「はい、もしもし」
『……元気か?』
その声に、はっと去っていきそうになっていた記憶を取り戻す。
「……げ、元気、です」
電話の向こうで絹笠さんが小さく息を吐くのが聞こえた。
わたしはわたしで、口から泡を吹きそうだ。何故、よく確認せずに出てしまったんだろう。無視するのもどうかとは思うけど。
『なら良いけど』
「すみません、ちょっと、最近……」
立て込んでいて、と続けようとしたが、脳裏にあの女性が現れる。
絹笠さんからかけた電話だ。用件を聞こう。