といってもこの店舗しかないのだけれど。 絹笠さんはわたしの手を掴んだまま、胸の高さに上げる。 「どういう漢字?」 「湖の鳥、です」 「綺麗な名前だな」 思わず笑ってしまう。きょとんとした顔に弁明する。 「だって絹笠さん、さっきからずっと褒めてくれるから。何も出ませんよ」 「出なくて良い。だから、考えておいてくれ」 指先に口付けが落ちる。 一縷の願い。 わたしは現実的でないような、そんな気持ちでそれを見ていた。