ちゃんと家まで送ってくれた。道順もしっかりと覚えられている。
「コトリって」
「なんですか」
「もしかして羽巣さんの名前?」
尋ねられ、顔を上げる。
「……そうですが」
「不本意そうな顔だな」
「羽に巣にコトリなんて、連想ゲームじゃないですか」
「じゃあここ、羽巣家のクリーニング屋なのか」
「両親のあとを継いでます」
店先のシャッターはもう閉まっている。
「就活のタイミングで、父が腰を悪くして隠居するって言い始めて。急にわたしに降ってきた採用通知ですよ」
「すごいな……社長か」
「それ辞めてください……まだ店長とかの方が」