「別に良いんじゃない」
「でも貴重な人材なので……」
「僕らは羽巣さんに付いてくよ、社長」

ひらりと手を振った。
信用されているのか、それとも匙を投げられているのか、分からない。

それでも、ここに留まってくれているのは本当に有り難い。

紙に書かれた電話番号を見る。

……焼肉、食べたいな。

何となく現実逃避へと走った。スマホを手に取り、それに返信した。

暫く経って、メッセージが返ってきていた。

『予約した。楽しみにしてる』

あの胡散臭い笑顔を思い出すと、少しだけ心が軽くなった。