しばらく歩いて行くと、明かりが灯っている場所が見えてくる。ナースステーションだ。夜勤の看護師が忙しそうに点滴や薬の確認をしている。

そこへ、「お疲れ様です」と言いながら高嶺がナースステーションへと入って行く。今日は高嶺が当直の日なのだ。

「お疲れ様です」

新人らしき看護師がニコリと笑って高嶺に挨拶をする。高嶺もニコリと微笑み返した刹那、「先生」と年配の看護師が声をかけた。

「この病室にいる水野未来さん、いつ退院の許可を出されるんですか?もうリハビリの必要がないくらい元気で、発作も何も起きていません。いつでも退院できるんですよ。なのに、ズルズルズルズル退院を意図的に伸ばして、一体先生は何の目的で彼女を入院させているんですか?」

(えっ?)

ドクンと心臓が跳ねる。未来の頬を冷や汗が伝った。退院を先生が伸ばしている?意図的に?どうして?そんな疑問と高嶺に対する恐怖心で頭はいっぱいになり、ただこの会話を聞いていることがバレないよう、未来はナースステーションの窓口の下に移動し、そこに座り込む。