高嶺とは手が繋がれたままだ。これは、未来の主治医が高嶺になった頃からである。転んでしまうといけないから、と高嶺と手を繋ぐことがルールのようになっていた。未来は外に出られる嬉しさから、何も考えてはいないが。

中庭には、季節を少しでも感じられるようにと、その季節を代表する花が植えられている。夏になろうとしている花壇には、朝顔やひまわりの花が植えられていた。

「綺麗〜!先生、お花すっごく綺麗!」

「未来は昔から花が好きですね」

微笑む高嶺に対し、未来は「入退院ばっかりで、友達なんていないから」と呟く。みんなが当たり前に過ごせる日常は未来にとっては夢物語で、想像することしかできなかった。

「友達がいなくても、僕がいますよ」

高嶺に強く手を握られ、未来は「うん、そうだね」と言いながら握り返す。

「早く退院したいなぁ」

未来の呟きに、高嶺は無表情のまま空を見上げていた。



その日の夜、消灯時間になったため、未来は電気を消してベッドの上で目を閉じる。昼間、少しはしゃいだためか、いつもより早く眠ることができた。