普通の恋愛ってなんだろう…って考えたときに。
運命的な出会いが思ってもみないときに現れて、そこから恋に落ちてお付き合いをして。
そして、ゆくゆくは結婚。
それが今の時代の、現代の、ありふれた恋愛観だと思う───のだけど。
「かなの、お前の婚約者が決まったぞ。これから挨拶にくるから準備しておきなさい」
「えっ、こ、これから…!?私いま起きたところだよお父さん…!」
「前に言っていたじゃないか。まったく相変わらずかなのはマイペースというか、おっちょこちょいというか…」
どうやら私の家は、そうではないらしく。
高校1年生、つまりお互いに16歳になると親が自動的に婚約者となる存在を決めてくれちゃって。
こうしていきなり家に連れてくるような私の家は、わりと有名な家柄で。
「初めまして。…櫻井(さくらい)です」
「あっ、は、初めまして……由比(ゆい)、です…」
着物を着付けられて、どぎまぎと緊張のなか客間で待っていると、登場した袴姿の若き青年。
深々と下げた頭を上げて改めて正面から見つめてみれば、どこかで見たことあるなぁ…なんて第一印象。
……見たことあるというか、知ってる人だ…。