やだっ…私

私は自分の恥ずかしい行動に,声をひっくり返しながら凪に言う。

一体いつからこんなにも固く凪の手を握りしめていたんだろう。

凪は珍しく戸惑った顔をしていた。

私はまた足元を見て,握られていない手で口元を隠す。



「……嬉しいから,いい」



凪らしくない,はっきりしない喋り方に,私は凪をチラリと見上げた。

凪は,鼻でも痒いのか私と同じようなポーズをとって,私から顔を背けている。

凪,変。

私が凪と同い年だったら,その理由も分かるのかな。

変なんて大雑把な感覚じゃなくて,もっと的確に理解できるのかな。

分からない。
だってせっかく1つ年を取っても,その時は凪も1つ年を取るから。



「真理。今日は,やっぱりもう少し帰るの止めとこっか」



凪が言う。



「え…?」



私は困惑した頭で,凪としっかり目を合わせた。

帰らないで,どうするんだろう?

顔をあげて見つめた凪の目は,月の輝く静かな夜の海みたいに,優しく凪いでいた。