「真理,お待たせ! 帰ろっか」



それを誤魔化して凪の手を取ると,今度は自分とは関係無い風景を見ているような気になる。

それすらも見ないふりをして顔を左右にふった時,私を睨む1人の先輩女子が見えた。

私ははっとして,顔を反らす。

また…。

それを敏感に感じ取った凪は素早く振り向いて



「次僕の真理にそんな目を向けたら,君とは友達でいられない」



そう低い声で言った。

私はただうつむく。

どうせ友達になりたいとは,あの子も思ってないよ,凪。

ほんとは,分かってるんでしょ?

でも。

…凪は,私を蔑ろにする事を決してよしとしない。

あの人は見たことない人だった。
 
だから,きっと知らなかったのだろう。

だってまだ,私がこの高校に入学して,1月もたってない。

そう,他人事に思った。

そう,するしか,無かった。

でも,他の女の子だっておんなじだ。

ただ知っているだけで,巧妙に隠しているだけで。皆,思っていることはあの人と同じ。

私を容赦なく睨んだあの人が,泣きそうな顔をする。

どうして,そんな言葉が頭に届いた。

そんなの,私が知るわけない。

なんであんな釣り合わない子が。
想い合っているわけでもない,親の約束だけの子が。

そんなの,私が1番分かってる。

私が,1番聞きたい。

誰も口にしてないのに,私は耳を塞ぎたくなった。



「真理?」



私ははっと顔をあげる。

気付けば学校を遠く離れて,家に着きそうになっていた。



「ごっごめん…っ」