友達がいない。

それは致命的とは言わなくても,そこそこ静かで寂しいもの。

特に,お昼。

高校に上がっても,走り回る人は一定数いる。

その1人が,私にぶつかった。



「うわっ……あ,ごめん!!」

「ううん,大丈夫」



名字は,分からない。

千夏と,色んな人に呼ばれているのは知っている。

私が呼んだことは未だない。

その人が満面の笑みを私に向けた。

私が視線をそらして言い淀むと,その間にそのクラスメートはまた走って行ってしまう。

お弁当に目を落とし,私は冷凍のミニハンバーグを頬張った。

お母さんがケチャップを付けてくれていて,「美味しい」と思う。

ふとお弁当が陰った。

見開いた目で見上げると,さっきの人で。

用件が分からず固まってしまう。



「美味しそー! あ,これ。前に置いてあったよ」

「あ,ありがとう……」


昨日回収された,数学のノートだった。

……私には,友達がいない。





放課後になって。

過ぎていく人を横目に,校門前に立っているのは私。

数分待つと,いつも通り凪が駆けて来る。

……沢山の,女の子を引き連れて。

凪を囲むのは,いつだって私の先輩。凪の同級生。

疎外感? 劣等感? 

その光景に,私はいつだって喉がざらざらするような,胸がざわざわするような感覚になった。