沢山の人と仲良くなれて,沢山よくしてもらって。

少し,思い違いをしていたのかもしれない。

好かれなくてもいい。

それでも,少しお話しできるくらいにはなれるんだって。

誰とでもなんて,そんなはずはないのに。

今だって,最初に友達だと笑ってくれた人1人失ってしまいそうなのに。

それでも凪がいる。

今まではどこかそうやって生きてきた。

だけど今日はこんなところまで運ばれて,近くに凪がいないと分かっているからか,余計に不安になる。



「 」



だけどもうそれ"だけ"じゃいけないんだって分かっているから,私は顔を上げた。

ちゃんと現実を認めて,選んでいかなく……あれ?

そう言えば,今,誰か何かを言った……?

小さくて聞こえなかったけど,もしかして ま って言ったの?

顔を上げる直前に聞こえた声の正体が知りたくて振り向くと,不自然に離れた所に,千夏くんがいた。

もしかして,私に,声をかけようとした……?

思わずきょとんと見返すと,直ぐになんでもなかったかのように逸らされる視線。

気のせい,か。

考えすぎて,期待が前に出てしまったのかもしれない。

前を向き直すと,その動きで起きた風が,頬を滑った。