自分達が呼ばれるのを待ち,自然と班員がばらばらになった。

私は,1面緑の畑を眺める。

そよっと風が吹いて,気持ちがよかった。

目線の先で小さなシルエットが動く。

なんだろう……

よくよく目を細めると,それは



「あ,くろねこ……」



そう見ないような,黒く小さな子猫だった。

可愛いと口元を緩めると同時,数m向こうの隣にいた人が,僅かに反応した気がした。

不思議に思って私が見ると,そこに居たのは千夏くんで。

千夏くんもまた,子猫を見ていたのだと分かった。



「C班,えー行くぞー」



つい先ほど私を起こした,太くない低音。



「あっはい……!」



私は大きくないけど頑張って出した声で,存在を主張し,返事をする。

既に他の3人は,細身で長身の,隣のクラスの担任を囲むようにして集まっていた。

真香さんが,笑顔で私に手を振っている。



「いくよ,千夏くん」

「……うん」



ようやく一歩を踏み出した千夏くん。

余計なことを言ったかと,私も少し戸惑った。