「なんで肉まん」



ウィーンと閉じる扉を背に,私は凪に尋ねる。

もう暗いからか,車の信号が赤だからか,外はとても静かだ。

ただただ星がきれい。

私には凪が家を引き返すほど肉まんが好きだという記憶もなければ,家も近かった中,お腹が空いていたわけでもないだろうと思う。

小さく首をかしげた。

温かそうな小さな塊が,今はただただ不思議。



「真理と食べようと思って」



凪の大きな手が,ほくほくのそれを2つに割いていく。

私…?

私はじっとその動きを見つめた。

すると凪は楽しそうに笑う。



「真理はちっちゃい時も,そうやって僕の手を見てた」



私は意味もなくふっと息を吸って,吐いた。

凪と一緒にいたくて散歩した,帰りの話。

私と凪だけが知っている,秘密のお散歩。

私は,あの頃となにも変わっていないって事かな。

凪の悪気ない一言に,切なさが胸に甘く広がっていく。