挨拶が終わると、窓に肘をついて外を眺める。
勉強は、可もなく不可もなく無難にこなしている。

それもまた、俺が平凡な理由のひとつかもしれない。
部活もやっていないし、趣味といえば小説を読むこと。

授業が始まれば、隠れて本を読み、窓際の席から外を眺める日々だ。
誰にも聞こえない、音にもならないため息の回数だけが増えていく。

まるで、自分がこの世界に取り残されているような、周りの時間だけが進んでいるような感覚に襲われる。
友達もいる、誰かと同じ普通の高校生、その現状に不満なんてない。

ふと時計を見ると、時間はあまり進んでいない。

「まだ3時間目か」

とても長く感じる日々。
折り返しの昼休みでさえ、何度時計を見れば進むのか動かない針に苛立ちを感じてしまう。

黒板の前で話している教師の姿も、どこか現実とは思えない。
映画のワンシーンを、スクリーンで見ているような感覚だった。

自分が、その中にいるとは思えなかった。
打ち解けられないのか、自分のせいなのか、新しく始まった生活に取り残されていた。

「次の授業までに、今のプリント確認しとくように。はい日直」

チャイムが鳴り、長かった午前の授業が終わる。
背中を伸ばしながら、ゆっくり首を回すとゴリゴリと音が鳴った。