揺れに踏んばること数分、1つ目の駅に停車した。乗客がなだれ込んできて車内の密度が上がる。
車両が違うだけでこんなにも環境が変わるなんて。
やっぱりあいつ、本当に頭おかしくなったんじゃ……。
本気で心配になり、チラッと見上げると、険しい顔つきで周りを見ていた。
誰か、捜してる? 友達とか? いや、それなら睨むような目しないか。
犬派と猫派で時々言い争ってる一ノ瀬くんならありそうだけど、彼、自転車通学だから違うし。
考えてもわからなかったので、停車したタイミングで尋ねてみる。
「ねぇ、さっきからチラチラ何見てるの? 誰か捜してるの?」
「おぅ。痴漢野郎を捜してる」
手のひらで口を覆い、大声が出そうになったのを抑えた。
「……は⁉ まさか、捕まえるつもり⁉」
「それ以外に何があんだよ」
迷いなく即答した雷夜。
だからわざわざ移動したのね。
真の目的がわかって納得はしたけれど……。
「んな無茶な……! お父さんならまだしも、あんたド素人でしょ⁉」