気まずい空気の中黙り込んでいたら、雷夜のお父さんが出てきて、ふと思い出した。
もう耳にしていると思うけど、一応伝えておかなくちゃ。
「マジ? ここで?」
「うん。知らなかった?」
「いや、この路線でってことしか聞いてなかった」
予想外の反応を見せた雷夜。
祖父母の家から帰宅した夜、父親に教えてもらったとのこと。だけど、駅までは知らなかったみたいだ。
「まもなく、1番乗り場に、7時57分発、急行◯◯行きが──」
詳しく説明していると、ホームにアナウンスが流れた。
おっ、来た来た。新学期2日目、今日も窓際は空いてるかな?
「えっ……ちょっと、どこ行くの?」
すると突然、雷夜が列から離脱。走ってくる電車に向かうように歩き始めた。
「俺、真ん中の車両に乗るから」
「なんで? こっちのほうが人少ないよ?」
自分も列から抜けて、腕を掴んで呼び止める。
「いいんだよ。今日は人に囲まれたい気分だから」