明宏が叫び、誰もが我に返った。


倒れた美樹をまたぐようにして走り出す。


走りながら佳奈は考えた。


もしも自分が慎也の地蔵と遭遇したとき、ちゃんと発砲することができるんだろうか。


地蔵は銃では死なない。


刀で首を切ったとしても、首になっている人間は死なない。


そう理解していても、簡単なことではないのはわかっていた。


今明宏はどんな気持ちで美樹に銃口を向けたのだろう。


やらないとやられる。


それはわかっていても、それとこれとは別だと、佳奈の頭の中ではまだ葛藤が残っていた。


それを振り払うように足を前に進める。


それからも何体もの黒い化け物が佳奈たちを襲ってきた。


その度に明宏は銃口を向けて化け物を退治していく。


明宏の目に涙がにじみ、八つ当たりするように化け物を殺しているのだと佳奈は気が付いた。


明宏の中にも佳奈と同じ葛藤が残っていたのだ。