「明宏、早く!」


すでに逃げる体勢に入っている春香が真っ青な顔で叫ぶ。


それでも明宏はそこから動こうとしなかった。


代わりに、猟銃を構えたのだ。


その銃口は美樹の顔をした地蔵へと向けられている。


その瞬間佳奈たちは明宏がなにをしようとしているのか理解した。


咄嗟に大輔が止めに入ろうと動く。


しかし、それよりも早く地蔵が攻撃をしかけてきていた。


明宏と地蔵の距離が一気に縮まる。


地蔵の両手が伸ばされて明宏の首をつかもうとしている。


その直前、銃声が鳴り響いた。


反射的に目を閉じて身をかがめる佳奈。


すぐに目をあけると美樹の顔をした地蔵は後方に倒れ込んでいて、明宏の持っている猟銃からは煙が出ていた。


佳奈はその光景に呆然と立ち尽くしてしまう。


その間はほんの数秒ほどだったはずだ。


「今のうちだ!」