街は血と肉の臭いで溢れて嘔吐感がこみ上げてくる。


思わずその場にうずくまってしまいそうになるが、どうにか自分を叱咤して走り続ける。


「首取りをしていた人たちの名前は覚えてる。工藤に中村に本間に原田に柏木」


走りながら明宏が言った。


なんのことだろうと思うけれど、声に出して聞く余裕はない。


前から襲ってくる黒い化け物が逃げ惑う人々を手にかけている。


その横を無情にも通り過ぎて、明宏は叫ぶ。


「柏木という名字はこの街には珍しい。探せばすぐに見つかるはずだ」


そこで明宏の言っていることを理解した。


首取りの子孫である人たちに話を聞けば、地蔵を止める方法がわかるかもしれないのだ。


実際に亮一はなにか知っている様子だった。


まだ高校生の亮一でも知っていたことなのだから、その家計の人ならみんな知っている可能性がある!


そう理解するととたんに視界が開けてきた。


うまく行けばこれで悪夢とはおさらばすることができるのだから。