「ギャッ!」


短い悲鳴が聞こえてきて化け物がひるむ。


そのすきに襲われていた2人が立ちあがり、こちらへ向けて駆け出した。


やっぱり、智子と亮一だ!


2人は手足に傷を負っていて、走ることもままならない。


「ここからじゃ少し遠いんだよな」


智子たちを追ってくる黒い化け物に猟銃の焦点を合わせるが、大輔はなかなか引き金を引くことができなかった。


ここで無駄に弾を使ってしまうのも嫌だった。


「貸して」


横から明宏が手を伸ばして猟銃を受け取った。


ナイフ投げは得意だけれど、本物の銃にふれるのはこれが初めてだった。


触れた瞬間少しの恐怖心と、大きな好奇心が湧いてきた。


こんなときに不謹慎かもしれないが、楽しさすら感じられる。


明宏はほんの少し笑みを浮かべて銃口を化け物へ向けた。


肩を撃たれた化け物の動きは少しだけ鈍くなっていて、更に真っ直ぐに近づいてくることで狙いを定めることは簡単だった。