「……服を変えたくらいで、僕の新しい仕事は見つかりますか?家族は戻ってきますか?恋人はできますか?できないですよね!?」

怒鳴った瞬間、ルイの瞳から涙が溢れていた。女性は服を手にしたまま黙り、ルイは心の内を全て吐き出す。

「僕は、ずっとレストランでコックとして働いてました。でも不景気でレストランが潰れて職を失って、その直後に「寄生虫を養う気はない」って恋人に振られて、家族は交通事故で死んで、もう散々なんですよ!もう何もかもどうでもいいし、この人生に希望なんてない!」

泣きながらその場に崩れ落ちたルイを、女性は「そんなことがあったのね」と申し訳なさそうな目をし、次の瞬間、ルイの体は女性の温もりに包まれていた。女性のつけているコロンの香りがふわりとルイの鼻腔を刺激する。

「辛いわよね、でも死んだら何も残らないわよ」

ルイより五歳年上のデザイナー、フランソワーズとはこうして出会い、それからルイはフランソワーズに励まされ、少しずつ前を向くようになったのだ。