彼の瞳には、美しい桜の花は目に入らず、春の穏やかなひと時に心が弾むこともなかった。ただ、幸せそうに笑う人たちに嫉妬し、全てに絶望している。

「もう、僕はダメなんだ……」

ルイは頭を抱え、どうやって死のうかと考え始める。すると、ルイの隣に一人の女性が座った。春らしい花柄のワンピースを着た女性は、ルイの目にはキラキラと輝いて見えて、「こんにちは」と声をかけられたのに無視をしてしまう。すると、女性に両頬を包まれ、強制的に目を合わせられた。

「せっかく綺麗な桜も咲いているのに、どうしてそんな今にも死んでしまいそうな顔をしてるの？」

女性の心配そうな目に、ルイの心が揺らぐ。初めてかけられた優しい言葉に、涙腺が緩みそうになる。だがそれを唇を噛み締めて堪え、女性の手を振り払った。

「あなたには、関係ありません！僕がどうなったってあなたにメリットもデメリットもない！」

そう吐き捨てたルイに対し、女性は怒ることなく優しく微笑む。そしてルイの手を取り、「ねえ、今から時間ある？」と訊かれ、ルイが答える前に女性に連れられて公園を出ていた。