クロコとアツシの距離が縮まったのは、お互いが惹かれ合っていればごく当然の成り行きだったと思う。
きっとそうなる運命だったのだろう。
二人は告白もなく、飛び越えた関係になった。
アツシはクロコを柔らかな愛で包んだ。クロコもアツシの逞しい腕にしがみついた。
二人の愛は静かに、ただ静かに育まれた。

二人は遠くまで出掛けた。休日は映画やショッピング、バイトのある日は、終わってからご飯を食べに行った。
クロコの恋愛は幼かったと思う。動物園や遊園地に行きたがるクロコ。一緒じゃないとまともにご飯を食べないクロコ。笑顔で別れても部屋に帰ると膝を抱えて泣くクロコ。

きっとクロコは愛とは縁遠い人生だったのだろう。

愛情表現の下手なクロコにアツシはよく言っていた。
「もっとたくさん好きと言ってほしい。もっとちゃんと口に出してほしい。」と。
でもクロコには出来なかった。