意識の狭間にいつもいるのは一人の男だった。私が一番愛した人…。
クロコの青春は周りより遅かった。クロコにとって生きることは苦しいことで、周りのみんなが楽しいと言っていた高校生の頃は特に苦しかった。
高校を卒業して短大に入り、そこで初めてクロコに遅い青春がやって来た。

クロコを苦しみから解放してくれたのはアツシと言う5歳年上のバイト先の先輩だった。
アツシはクロコの容姿に一目惚れしていた。アツシにとっての女性像は背が小さく、目の大きな色白の子で、クロコはまさにそうだった。
クロコはクロコでアツシに惹かれるものを感じていた。
自分にはない魅力をアツシは持ってる。この人は他の人とは違う感性がある。そう思わせるアツシをクロコは意識し始めた。
アツシはよくクロコを誘って出掛けた。それはクロコにとって今まで経験したことのないものだった。クロコにだって恋愛の経験はあった。だが、アツシのように素敵な時間をくれる人はいなかった。