「ごめんなさい!とっても素敵だけど、私には高価すぎて…。」
店員は嫌な顔一つせずに
「では次の機会にでも。いつでもあなた様のご来店をお待ちしています。」
と優しくお辞儀をしてくれた。
私は申し訳ない気分になりながらそそくさといつもの自分に戻り、店を出た。

クロコ、あんた馬鹿ね。せっかく素敵だったのに。
まぁ、これでわかったでしょ。あんたは変われるわ。
クロコ、あんたは何になりたい?

私は…。何になりたいかすら考えたことがなかった。
でもまたこんなふうになっては困る。
「少し時間をちょうだい。私、考えてみるから。」
端から見れば独り言を言っているのも忘れて、クロコは空に向かって話しかけていた。

その夜、部屋に帰ったクロコはぼーっとしていた。
窓の外には雨が降っている。遠くからカエルの歌が聞こえてくる。
クロコはゆっくりと封印していた過去を思い出していた。