私が着くともうクラスメイトはほとんど教室に来ていて、教室内はガヤガヤと盛り上がっていた。
「え!あのアイドルグループ好きなの!?」
「私も私も!」
「え〜!皆誰推し?」
キャッキャとアイドルの話をする女子。
「担任可愛いお姉さんがいいな〜」
「俺は胸が大きければ誰でもいいや!!」
「男でもいいのか〜?」
「男でもいい。」
胸の話…ではなく、担任の話をする男子。
いや、いいのかよ。と、心の中で突っ込みながらも、恐る恐る教室の入り口を潜る。
教室を見渡すともう既にみんなグループを作って話し始めていて。
私には楽しそうに話す女子達の中に入って行く勇気なんてある訳なくて、私は静かに自分の席に腰を下ろした。
人が去るのを待つんじゃなくて、勇気を出して早いタイミングで教室に向かえば良かったのだろうか。
そしたら話の輪に入れていただろうか。
いや、まだ間に合うはず、まだ初日、
頑張るって決めたじゃん。
頑張るって決めた。
っだけど…
怖い、怖いんだ。
記憶を無くしたあの日から、どうしても人に会うのが怖くなった。
私みたいなのが友達になったら、私のせいで、もしかしたら変なことに巻き込んじゃうんじゃないかって。
友達を作った事があるわけでもないのに、長い間人に会わなかったからかそんな恐怖心が生まれてしまう。
やっぱりこのままでいいかもしれない、このままで……