「天馬くんっ……」


顔を上げるとすぐ近くに天馬くんの唇が。


思わず顔を背けてしまう。


天馬くんの体、やっぱりガッチリしてて私が倒れてもビクともしないんだな……。


「ちひろ?」


「え?」


「可愛い」


「っ!!」


急にそんなこと言うもんだからどんな反応していいのか。


「そーゆー慣れてない感じが可愛い」


思った事ハッキリ言っちゃうんだもんな……。


「慣れてないもん……」


「それでいいと思う」


それでいい?

天馬くんは慣れてない子の方が好みってこと……?



〝忘れられない人がいるとかなんとか〟


ふいに麻衣ちゃんの言葉を思い出した。


天馬くんは別に私の事を好きなわけでもないし、忘れられない人もいる。


だからさっきのキスも、きっとなんの意味もない。


余計にそれが悲しくて。