「まあ、由良の後ろは特別かもな。……でも俺は、誰でも乗せられるし、乗せてきたし。光莉もそのうちの1人だから、あまり気にするな」


澪さんには、私の後ろめたい気持ちまで見透かされてしまった。



「最後にもう1つ」


駅に着いて、立ち止まった澪さん。


「由良が光莉の前からいなくなることはないと思う。つーか、絶対できない」


MIOとしては見せない笑顔でそう言った。


それが背中を押す言葉だと気づいたのは、電車に乗っている最中だった。



電車の中で考えたのは、由良くんや杏樹さんのこと。

それと、杏樹さんが作った空中楼閣のみんなのこと。


みんないい人だった。

きっと杏樹さんもそういう人だったんだろうな。


行動や仕草にその人が表れるというけれど、残したものでもその人のことを知れるってわかった。

杏樹さんが残したものの中で杏樹さんは生きている──そんな気がした。