「絢花、協力するから今日決めなさいよ」
 「え?」
 決めるって、どういうこと?
 協力って、何を?
 里穂の言ってることがいまいちわからなくて、間抜けな返事をしてしまった。
 「だから。黒江魁吏に告白しなさいよ」 
 「私たち、絢花ちゃんと黒江さん二人きりの時間ができるように協力しますから!」
 「え、ええ!?」
 里穂がぽんと私の肩に手を置きながら、そう言う。
 椿ちゃんもなんだか意気込んでいるようで、両手を胸の前でぐっと握っていた。
 一方の私はというと、まさかの二人の言葉に驚きを隠せない。
 こ、ここここ告白!?
 私が、魁吏くんに・・・っていう意味であってるよね?
 ・・・私だって『告白』という文字が頭をよぎったことがないと言えば嘘になる。
 でも、そのたびに勇気が出なくて諦めていた。
 なんせ恋愛をするのが初めてで、どうしても奥手になっちゃうから。 
 もし告白が失敗したら、とかそのせいで気まずくなってしまったら、とかとにかく悪い考えしか頭をよぎらない。
 だって、相手はあの魁吏くんだ。
 そして私は、魁吏くんとはとてもじゃないけど釣り合わない地味子だ。
 そうやって臆病になって、告白をできない理由を探して勝手に落ち込んで、ぬるま湯みたいな今の距離感に甘えているのが今の状況。
 「・・・・・・でも、きっと無理だよ」
 どこまでも臆病な私が絞り出した言葉は、どうしようもなく情けない。
 一歩を踏み出したけど、悪い考えがつきまとう。
 「大丈夫。私の見立てによると、黒江魁吏は絢花に惚れてるはずだから」
 「私も、そう思います!」
 魁吏くんが、私に惚れている・・・?
 それこそ、夢のまた夢だよ。
 里穂と椿ちゃんは優しいから、そう言ってくれるだけで。
 「でも・・・・・・」
 ピピピ、ピピピ。
 私がさらに弱音を吐こうとしたとき、アラーム音がそれを遮る。
 そういえば、待ち合わせに遅れないようにあらかじめ設定してあったんだったっけ。
 アラームの音で、一旦告白の話はその場ではうやむやになった。
 里穂と椿ちゃんの気持ちは変わってなかったみたいだけど。
 私の心の中には『告白』の文字のかけらが引っかかったまま、私たちは椿ちゃんの家をあとにした。


 がやがや、がやがや、がやがや。
 地域でも割と大きなお祭りということもあって、神社の敷地内には多くの人が来ていた。
 河原にも、花火を見るための場所を確保している人たちがたくさんいる。