どうして私は肝心なところでキメきれないんだっ!
 自身のテンパり具合に、自分でも呆れてしまう。
 あああ、沈黙が辛い。
 本当に辛い。
 絶対魁吏くん、何言ってるんだコイツみたいなこと思ってるよね。
 すみませんすみませんすみません、私みたいな地味子が魁吏くんみたいなキラキラしている人を花火大会に誘うなんて、いくらなんでも調子に乗りすぎました・・・。
 いやもう、断るでもなんでもいいからこの無言の空間を終わらせてくれ!
 ギュッと服の生地を握りしめる。
 「・・・・・・ふはっ」
 「・・・・・・え?」
 突然こらえきれずに吹き出してしまったような笑い声が聞こえて、私は下を向いていた顔をあげた。
 見ると、魁吏くんが肩を震わせながら笑っている。
 「なんで誘うだけでそんな必死なんだよ・・・ははっ」
 ・・・よくわからないけど、何故かウケてる・・・?
 魁吏くんのツボが謎すぎる。
 今の私の言動のどこに、そんなに笑う要素があったんだろう?
 不思議そうに首を傾げた私の姿がまた魁吏くんのツボにクリーンヒットしたのか、また魁吏くんは笑った。
 というか、魁吏くん無邪気に笑うなぁ・・・。
 体育祭のときとはまた違う、少し幼く見える笑顔。
 この笑顔も、もれなくキラキラと輝いている。
 ・・・今なら、さっきほど緊張せずに返事、聞けるかも・・・?
 「か、魁吏くん・・・。一緒に花火大会に行ってくれる?」
 笑っている魁吏くんに向き直って、恐る恐る私はもう一度魁吏くんのことを誘ってみる。
 これでダメなら、もう一緒に花火大会に行くのは諦めよう。
 当たって砕けろ、の精神だ!
 「・・・・・・いーよ」
 「えっ!?ほ、本当!?」
 「なんで嘘つく必要があるんだよ」
 まさかの返事に、素っ頓狂(すっとんきょう)な声が出てしまう。
 う、嘘じゃないよね?
 本当に、一緒に花火大会に行ってくれるんだ・・・!
 やった、やったやった!
 あまりの嬉しさにピョンピョン跳ねたくなる己の内なる衝動をどうにか抑える。
 そんなことしたら、魁吏くんに変な目で見られてしまう。
 「魁吏くん、ありがとう!」
 今年の夏は、今までの中で一番楽しいものになりそうだ。
 せっかくの花火大会なんだもん、いっぱい思い出作らなきゃ!
 心のなかでそう意気込んだ私の耳には、魁吏くんの「・・・二人きりじゃねぇのかよ」という低い声は届かなかった。