でも、魁吏くんを誘わないと二人に申し訳ないし・・・。
 何より、里穂と椿ちゃんが作って与えてくれたこのチャンスを無駄にしたくない!
 やっぱりちょっと怖いけど・・・ファイトだ、私!


 「あ、あの・・・魁吏くん」
 その日の夕食が終わったあと、共有スペースに残っていた魁吏くんに私は思いきってタイミングを見計らって声をかけた。
 すでに晶くんは部屋に戻っていて、今ここにいるのは私と魁吏くんしかいない。
 晶くんのことはもう誘ってある。
 ちょうど、晶くんには里穂の彼氏さんからも連絡が行っていたみたいで思っていた通り二つ返事で了承してくれた。
 それに、『絢ちゃん、魁吏のこと好きなんだよね?誘うの頑張って』と励ましの言葉も添えられていた。
 きっと、食べ終わってすぐに自室に戻ったのも私が魁吏くんを誘いやすいようにという配慮をしてくれたんだろう。
 当然バレていると思っていなかった私はプチパニック状態に。
 晶くん曰く、最近の私の魁吏くんへの態度でわかったそうだ。
 ・・・そんなにわかりやすいのかな、私。
 なんせ、今まで恋らしい恋をしたことがないもので片思い相手にどういう態度、距離で接すればいいのかわからない。
 そういった晶くんとの会話もあって余計に意識してしまい、話しかけているだけなのに私の心臓はうるさいほどに騒いでいる。
 私の呼びかけに、ソファに腰掛けてスマホを見ていた魁吏くんはスクロールしていた指を止め顔をあげた。
 「なんだよ」
 お、落ち着け私。
 テンパったら負けだ、焦るな。
 いける、いける、大丈夫。
 自分のことを何度も何度も応援して、私は口を開いた。
 「えっと・・・に、日曜日にある花火大会、一緒に行かない!?」
 「花火大会?」
 「そ、そう!私、行くの初めてだから誰かと一緒に行きたいなっと思ってて!あ、も、もちろん二人きりってわけじゃないよ!あの、晶くんと里穂と、里穂の彼氏と、あとこの前話した椿ちゃんの六人で!私みたいな地味子とずっと二人じゃないから安心して!ほら、みんなと行ったほうが楽しいし!だから、その・・・」
 「・・・・・・」
 「・・・私と一緒に、お祭りに行ってくれませんか」
 あれだけ落ち着けと念じていたくせに魁吏くんを前に結局テンパってしまった私は早口でそう言ったあと、最後は消えてしまいそうな声でうつむきながら一番言いたかったことを伝えた。