目一杯拍手を送った。
 全チームがゴールし終え、順位確認のためにそれぞれが数字の書かれた旗の隣に並んで立つ。
 もちろん、一の旗の隣に立つのは魁吏くん。
 その姿はとてもキラキラ輝いていて、女の子たちが好きになっちゃうのもわかる気がした。
 ・・・やっぱり、魁吏くんも晶くんも遠い存在だよね。
 たまたま、一緒にシェアハウスをすることになったから話すことができてるけど、本来なら一生関わることもなかったんだろうな。
 晶くんはともかく、無愛想な魁吏くんだったら話しかけることも、話しかけられることも絶対にない。
 そう考えると、シェアハウスのことがすごく不思議で特別な縁に思えてきた。
 シェアハウスのきっかけを作ってくれた伯母さんにはある意味感謝しないと。
 ずっと胸の前で拍手をしていると、魁吏くんと目があった。
 最近おかしな私は、それだけでドキドキしてしまう。
 私のそんな胸の中など知らない魁吏くんは、口パクで何かを伝えてくる。
 え〜っと、なになに・・・。
 『み』『て』『た』『か』
 見てたか、って私に訊いてる?
 もちろん見てたし、なんならものすごく応援してたよ!
 魁吏くんの口パクの問いかけに、コクコク頷いて答える。
 すると、魁吏くんは満足気に笑った。
 不敵で、それでいてどこか優しい笑顔。
 魁吏くんが、私に笑顔を向けている?
 あの、魁吏くんが・・・?
 もしかして・・・私、魁吏くんの笑顔見るの初めて?
 笑った魁吏くん・・・かっこいいな。
 ・・・え、今私なんて思った?
 笑った魁吏くんが・・・かっこいい?
 今までも、魁吏くんのことをかっこいいと思うことはあった。
 でも、それは全部魁吏くんの容姿がいい、という意味のかっこいいで。
 今回のかっこいいは、今までとは違う気がする。
 ええと、なんて説明したらいいのか・・・。
 とにかく違う。
 「絢花、顔赤いよ?」
 「大丈夫ですか・・・?」
 「え?」
 里穂と椿ちゃんに言われて、初めて自分が赤面していたことに気づく。
 どうして、私顔熱くなってるんだろ・・・?
 「なんか絢花の顔、恋してる乙女みたいだね」
 「えっ!?」
 里穂の言葉に、大げさすぎるほど動揺してしまった。
 私の顔が、恋してる乙女?
 ・・・・・・恋?
 何故か、その単語がストンとハマる。
 恋なんて・・・今までしたことがないから、これがそう呼ばれるものなのかは確信できないけど・・・。