それなのに、どんどん歓声は大きくなっていくからすごい。
 みんな、声枯れたりしないのかなぁ・・・。
 よくそんなに大声出し続けられるよね。
 なんにも知らない人が見たら、アイドルのライブ会場か何かと勘違いするんじゃないかな。
 まあ、実質この学校のアイドルなんだけど。 
 晶くんはアンカーの一歩手前、そして赤色のタスキをまとった魁吏くんはアンカー。
 第一走者がレーンに並ぶ。
 その頃には、歓声も一旦静まった。
 「位置について・・・よーい・・・」
 パァン―――!
 今までの競技と同じように、先生がスターターピストルを鳴らしてスタートする。
 選手の走るスピードの速いこと速いこと。
 やっぱり選ばれたメンバーということもあって、これまでの種目の比にならないくらい足が速い。
 男女でそのスピードには差があるけど、それでも私の目にはみんなが優れたランナーにうつった。
 白熱した戦いに、どのチームの応援も今日一番の盛り上がりを見せる。
 あっと言う間に第一走者はトラックを一周し終え、次のチームメンバーにバトンが渡る。
 現在、我らが赤組は四番目。
 第二走者も、軒並み速い。
 どういう人体の構造をしていたら、あそこまで風のように走れるんだ・・・?
 私と彼らは、体のつくりが違うのか。
 同じ人間なら、私だってもうちょっと速く走れたはずだ。
 そうこう考えているうちに、バトンは第十走者、後ろから三番目の選手の手に渡された。
 赤組の第十走者は、三年生の女の先輩。
 なんと、見事な巻き返しで順位は二位にまでなっていた。
 一位の青組とも、タッチの差。
 接戦に、思わず私まで大きな声で自分のチームを応援する。
 そんなときに、事件は起こった。
 先輩が、つまずいて転んでしまったのだ。
 ちょうど、私の目の前くらいで。
 膝を怪我したみたいで、起き上がるのに時間がかかっている。
 その間に後ろを走っていた選手にどんどん追い抜かされて、赤組は最下位までになった。
 赤組のメンバーからは、明らかに落胆したような声が漏れる。
 その声が届いたのか、先輩は涙を浮かべる。
 「せっかくいいところまでいってたのに、負けかよー」
 「あーあ」
 随分、失礼ないいようだ。
 勝利にこだわることに文句はないし残念だと思う気持ちもわかるけど、頑張っている選手に対してその言い方はないと思う。
 私の右隣に立っている里穂も同じことを思ったのか、不機嫌そうな顔になっている。