お弁当を取りに行こうと教室に向かってるときに、後ろから肩をガシって掴まれて。
 気持ち悪いくらいの猫なで声で名前を呼ばれたと思ったら、ずるずると連行されていた。
 途中で何人かの女の子と目があったけど、関わらないが吉と目をそらすだけ。
 あ、もしかしたらその中の誰かが魁吏くんに私が連れて行かれてることを伝えてくれたのかな?
 「チッ、ったく・・・。手間かけさせやがって」
 見れば、魁吏くんの額にはうっすら汗が滲んでいる。
 よほど、急いで探してくれたんだな。
 「ごめんね。それと、ありがとう」
 「・・・・・・もう二度とついていくなよ。それと、呼び出されたら真っ先に俺のこと呼べ」
 「わ、わかった・・・」
 今日の魁吏くん、いつもより優しい?
 どうして、そこまでしてくれるんだろう?
 「ねえ、魁吏くん。どうして・・・」
 私に優しくしてくれるの、と訊こうとしたとき、丁度昼休憩の終わりを告げるチャイムが鳴る。
 あ・・・・・・。
 お弁当、食べそこねた!!!
 今日のお弁当、唐揚げ入ってたのに!
 だし巻き卵も作ったのに!
 あまりのショックにずーん、と沈んでいると、魁吏くんが私に話しかけた。
 「・・・リレー、見とけよ」
 「え?」
 リレー?
 リレーって、魁吏くんと晶くんが出る予定のだよね?
 言われなくても、見て応援するつもりだったんだけど・・・。
 なんで、わざわざ?
 首をひねっていると、その間に魁吏くんはどこかに行ってしまっていた。
 ・・・一体、なんだったんだろう・・・?
 その場には、頭上にハテナマークが浮かんでいる私だけが取り残されていた。


 それから、時間は流れ。
 いよいよ、体育祭も大詰め。
 最終種目のチーム対抗リレーが始まろうとしていた。
 この競技は、各クラスから男女二名ずつの計四人の代表者をだし、一チーム12人で行う。
 走る順番に特に学年は関係なくて、各チームで好きなように決めるらしい。
 私と里穂、椿ちゃんは例のごとく応援スペースの最前列にいた。
 まだ視線は感じるけど、これから一番のお目当てのリレーが始まるということもあってさっきよりかはマシになっている。
 みんなが、リレーを心待ちにしている中、軽快な音楽がスピーカーから流れ出す。
 それと同時に、選手が入場門から登場した。
 魁吏くんも晶くんも出場するということで、歓声は今までと比べて段違いに大きい。