あやふやな態度を取り続ける私に、先輩方の表情はどんどん恐ろしくなっていく。
 「わからないわけないでしょ?」
 「アンタ、さっきからずっと生意気なのよ」
 「ちょっと顔がいいからって、調子に乗ってんじゃないわよ」
 「魁吏と晶はみんなのもの、誰も抜け駆けしないって決まりなの。わかってんの?」
 そんなルール、初めて聞いた。
 生意気、ってそんなつもりはないんだけどな。
 きっと、私が何を言ってもこの人達の神経を逆なでするだけ。
 それに、こういう風に私をよく思っていない、むしろ危害を加えたいと思ってる女の子は学校中にいるだろうし。
 ここで何か下手なことを言うと、さらに目をつけられて血祭りが激化するかもしれない。
 でも・・・一つだけ言ってやりたいことがあった。
 「・・・・・・ません」
 「はあ?何、もっと大きな声で喋ってくれないと聞こえないんだけど」
 「魁吏くんと晶くんは、ものなんかじゃありません!」
 みんなのもの、っていうけど二人は誰の所有物でもない。
 ちゃんと意思を持った、一人の人間だ。
 それを意思のない、人形扱いだなんて酷いよ。
 「何、生意気言ってんのよ!」
 「先輩に向かってそんな口ごたえしてもいいと思ってんの!?」
 「生意気でも構いませんし、年齢は関係ないです」
 勇気をだして、思ってることを言うと、先輩の顔は怒りで真っ赤になっていく。
 しかも、ワナワナと震えている。
 殴られたり叩かれたりするのかな?
 でも、不思議ともう怖くない。
 お腹の底から、勇気が湧いてくる。
 「アンタ、ふざけんじゃないわよ!」
 「ふざけてんのはどっちだよ」
 先輩のうちの一人が声を荒げると、それに合わせてもう聞き慣れた声が飛んできた。
 声のしたほうを見ると、そこには魁吏くんが立っていた。
 顔は明らかに不機嫌そうだ、というか怒っているようにすら見える。
 全員、どうしてここに魁吏くんがいるのかと驚く。
 「・・・ち、違うの。魁吏、これは」
 「何が違うんだよ」
 「それは・・・」
 先輩が弁解しようとするも、それは魁吏くんによって無慈悲にばっさりと切られてしまう。
 魁吏くんは冷たい目で、私を囲んでいる先輩たちを見下ろしていた。
 そのことに気がついた彼女たちは、一歩分私から離れた。
 そのさっきまで赤かった顔は、今は真っ青になっている。
 「言ったよな?そいつに何かしたら許さねぇって」