私だって、もし椿ちゃんの立場だったら驚くに決まっている。
 椿ちゃんは、口をパクパクさせている。
 それを見て、私も里穂も自然と笑顔になった。
 二人と話していたら、なんだか気持ちが落ち着いてきたな。
 「・・・あ、このことは、他の子には言わないでくれる?」
 「はい!三人の秘密、ですね!」
 頷いた直後に、音楽が流れ出す。
 騎馬戦終わっちゃったのかな・・・、きっと選手退場の音楽だよね。
 結局、応援できずじまいだった・・・。
 どうなったんだろう、結果。
 私の心の声が届いたかのように、アナウンスで騎馬戦の順位が放送される。
 「・・・一位、青組。・・・二位、緑組。・・・三位、赤組。・・・」
 赤組、三位だ!
 見ていた女の子からは、晶くんを褒める声が聞こえてくる。
 「晶くんの赤組、負けちゃったね・・・」
 「でもでも!晶くんの騎馬最後まで残っててすごかった!」
 「下で支えてる真白くん、超かっこよかったね〜!」
 晶くん、活躍していたんだな。
 見れなくて、ちょっと残念。
 午前中最後の競技が終わって、体育祭は一旦昼食休憩になった。


 ・・・そう、昼食休憩。
 午前の部と午後の部の間にある休憩は、本来お昼ごはんを食べるために設けられているもの。
 なのに、なのになぜ・・・。
 「ねえ、アンタさぁ。・・・魁吏の何なの?」
 ・・・私は三年生の先輩方に囲まれているのでしょうか。
 しかも、人気のない体育館裏で。
 魁吏の何なの、か・・・。
 そんなのこっちが聞きたいよ!
 私だってわからないから、現在進行形で混乱してるんじゃん!
 それにしても・・・こんな状況、どこかで体験した覚えが。
 ・・・・・・。
 あ、クラス委員に晶くんとなったときだ!
 まあ、そのとき私を呼び出したのは先輩じゃなくて同じクラスの子たちだったんだけど。
 短期間に、二回も体育館裏に連れてこられるなんて私は何かの呪いにかかってるんじゃないだろうか。
 「あのさぁ、何か言ったらどう?」
 「桃瀬さん、だっけぇ?魁吏の一番大切な異性ってどういうこと?」
 先輩たちは、口々に私を責め立てる。
 その気迫に、少しだけ押されてしまった。
 数歩後ずさると、背中に体育館の白い壁があたる。
 「私にも・・・よくわかりません・・・」
 「はあ?」
 はあ?って言われても、わからないものはわからないし。