隣の緑チームの女の子たちも、心配そうな顔をしている。
 あなたたちは、赤チームの魁吏くんじゃなくて緑チームの選手を応援しなさいよ。
 実際に言う勇気はないから、心のなかで静かにツッコミを入れる。
 でも・・・魁吏くん、大丈夫かな?
 さっきのツチノコみたいに、空想上の何かが当たったのかな?
 幸い、第四走者の人たちが引いたのはどれも無理難題らしく、まだ誰もお題のものを取ってきていない。
 しばらく固まっていたかと思うと、急に魁吏くんは顔を上げて走り出した。
 よかった、なんとかいったみたい。
 ・・・・・・あれ?
 なんだか魁吏くん、こっちに来てるような・・・?
 いやいや、気のせいだよねっ!
 「あれ?黒江先輩、もしかして私たちの方に来てる?」
 「え〜!」
 「走ってる先輩、マジカッコいい・・・」
 そのまま、魁吏くんは私たちの方に向かって近づいてくる。
 気のせいじゃ、ない?
 すごいスピードで来たかと思うと、魁吏くんは私の腕を掴んだ。
 「え?」
 「桃瀬。来い」
 急にぐんっと腕を引っ張られて為す術もなく、私は応援スペースから転がり出る。
 上手くバランスをとって、なんとかコケずにすんだ。
 「走れ」
 「え、あ、うん!」
 低い声で魁吏くんに命令されたので、私は走り出す。
 ・・・とはいっても、走るスピードがあまりにも違いすぎるので引きずられてる形になってるんだけど。
 「お題って、なんなの?」
 「・・・・・・」
 質問しても、魁吏くんは答えてくれない。
 そんなに失礼なお題なのかな?
 あ、もしかして『地味な女』だったりして!?
 ありえる、というか魁吏くんが運動音痴の私を選んで引っ張っていく理由がそれしか思いつかない。
 あ、やばい・・・。
 そろそろ、足が追いつかなくなってきた。
 魁吏くん、だいぶスピード落としてくれてるのに・・・。
 自分の体力の無さを呪う。
 「魁吏くん、あの、もう体力が・・・」
 私がそう助けを求めたとき、後ろから私たちを引き止める声が聞こえてきた。
 「黒江ー!何可愛い子捕まえてんだよ!ちょっと待てー!」
 後ろを振り返ると、青いはちまきの選手が跳び箱を抱えて走っている。
 大変そうだなぁ・・・。
 でも、流石こういう走る系の種目に出ていることもあって足は私の何倍も速い。
 って、感心している場合じゃない!
 このままじゃ私たち、追いつかれちゃうじゃん!