「「「キャーーーー!!!」」」
 三人で雑談していると、突然すごい歓声が応援スペースにいるほとんどの女の子からあがった。
 学年やチーム関係なく、女の子たちの視線は一人に集中している。
 その視線の集まるさきは、言わずもがな魁吏くん。
 「黒江先輩、本当にかっこいい!!」
 「先輩が走るの見るの、楽しみ・・・」
 「はちまきも似合いすぎ!」
 隣に立っていた緑色のはちまきを可愛らしく巻いた一年生たちがきゃあきゃあと頬を染めている。
 相変わらず、すごい人気だね・・・。
 当の本人は、大きすぎる歓声に「うざい」とか思ってるんだろうけど。
 ここからじゃ遠くて、魁吏くんの表情はよく見えないけどきっとしかめっ面だよね。
 魁吏くんは、第四走者みたい。
 学年順で並んでいるのかな。
 「位置について、よーい・・・」
 パァン!!!
 始まりの合図のスターターピストルを先生が鳴らして、第一走者が一斉に走り出す。
 みんな、足が速いなあ・・・。
 コースの途中におかれたボードに張ってある、お題がかかれた紙を取って各々目的のものを探し出す。
 どんなお題が書かれてるんだろう?
 「あひるなんて、いるわけねぇよ!」
 「ツチノコってなんだ!?幻の生物書くなよ!」
 「足にミサンガを巻いている方、ご協力お願いしまーす」
 「教頭先生、来てください!」
 「フランス人と中国人のハーフ!?ここ日本ですけど!?せめてどっちかは日本人の血にしてよ!」
 ・・・お題の当たり外れがすごい。
 簡単なお題の人は喜び、無理難題を引いてしまった人は顔面蒼白、阿鼻叫喚。
 せめて、この世に存在するものにはしてあげてよ・・・。
 観客は大盛りあがりだけど。
 応援スペースからはときおり「どんまい!」と選手に向かって声がかけられている。
 そうこうしているうちに、魁吏くんの番がやってきた。
 さっきまでと同じように、ピストルの音で選手は走り出す。
 えっ、魁吏くん、超足速い・・・!
 どうやったら、そんなに早く走れるんだろう?
 頭一つ抜けて、魁吏くんは一番最初にボードのところまでたどり着く。
 そして、紙を取って・・・硬直した。
 それはもう、見事に。
 ピシ、という効果音が聞こえてくるくらい。
 他の人は我先にと目当てのものを見つけよぅと奮闘するのに、魁吏くんは一歩も動かない。
 「黒江先輩、どうしたのかな・・・?」
 「お題、とんでもないものだったとか?」
 「え〜!先輩可哀想!」