赤色のはちまきをした人たちから歓喜と労い(ねぎらい)と称賛の歓声があがる。
 「借り物競走に出場する生徒は、指定された場所に集まってください。繰り返します。借り物競走に・・・」
 体育祭のアナウンスを担当している放送部員の人の声が、スピーカーで大きくグラウンドに響く。
 あ、もうすぐ借り物競争なんだ。
 魁吏くんも出るし、早く椿ちゃんの待つ応援スペースの最前列に戻って特等席から応援しよっと。
 「お疲れさまです、絢花ちゃん!一位おめでとうございます!」
 「ありがとう!・・・っていっても、ほとんど活躍なんてしてないんだけど・・・」
 「いえいえ、そんなことはないですよ!一生懸命投げてる絢花ちゃん、可愛かったです!」
 か、可愛い?
 私のどこに、そんな可愛いポイントがあるんだ?
 椿ちゃんの言ってることが、よくわからなくて私は曖昧(あいまい)にうなずいた。
 「絢花〜!」
 「あ、里穂」
 遠くから、里穂が手を振って私の名前を呼びながら近づいてくる。
 人目を引く美少女の、はちまき姿に周辺の男子は釘付けになっている。
 彼氏さん、これを見たら嫉妬するだろうなあ・・・。
 やっぱり、可愛いって言葉はああいう里穂みたいな女の子にふさわしい言葉だよ。
 うんうんと、一人で納得する。
 「絢花、お疲れ!・・・って、そっちの子は?」
 私の隣りにいる椿ちゃんに気がついた里穂は、首をかしげて私に質問する。
 さっき、私に人見知りだと教えてくれた椿ちゃんは固まってしまっている。
 もしかしてこれは、里穂に椿ちゃんを紹介するいい機会なのでは?
 「この子は、前に電話で話した十朱椿ちゃん」
 「ああ、この子が」
 「あ、あの!絢花ちゃんと仲良くさせていただいております、十朱椿と申します!橙山里穂さん・・・ですよね?い、以後お見知りおきを・・・!」
 椿ちゃん、緊張しすぎて同級生に話すときの言葉遣いじゃなくなってるよ!
 それに、椿ちゃん里穂のこと知ってたんだね。
 里穂、美少女で性格もいい子だって学年中に知れ渡ってるからかな?
 椿ちゃんの敬語に一瞬キョトンとしたあと、里穂は吹き出した。
 「絢花に聞いてた通りの子だね。そんなに堅くならないでよ(笑)」
 「は、はい」
 「椿って、呼んでいい?」
 「どうぞ、ぜひ呼んでください!」
 なんだか、昔の私を見ているみたい。
 私も、最初はどうしてこんな地味子に里穂みたいな子が話しかけてくれたのかわからなくてものすごく混乱して戸惑ってガッチガチに緊張しちゃってたんだよね。
 椿ちゃんは、地味子じゃないからそこはちょっと違うけど。