眼鏡をかけて、黒い髪を二つに結んでいます。
 先輩方は、一旦話をやめて彼女を見ました。
 『あの、お花踏んでいるので、足をどけてもらっていいですか?』
 『は?花?』
 『ああ、これのこと?』
 『ごめんごめん、でも俺たちわざとじゃないからさー。そんな怒んないでよ』
 『・・・怒ってないです』
 『あ、そう?』
 少し話したあと、先輩たちは軽く笑いながらその場を去っていきました。
 あの子・・・すごいです・・・。
 私には、きっとあそこまでスムーズに知らない方と話すことはできません。
 先輩がいなくなると、彼女はしゃがみこんで、手が汚れるのも気にせずに土をかき集めプランターに戻していきます。
 お花も、優しく持って本来あるべき場所に綺麗に直しました。
 おかげで、全部元通り。
 彼女はそれを見て満足そうに頷き、立ち上がりました。
 『絢花〜!待たせてごめんね』
 『里穂』
 『ってなに!?手、泥々じゃない!』
 友だちらしき可愛い子と、女の子は帰ってしまいました。
 あ・・・お礼、言えませんでした・・・。
 ・・・あの女の子の名前、絢花さんというんですね。
 絢花さんのことはよく知らないですけど、とっても優しい人だと思います。
 とっても優しくて、素敵な人。
 いつか、お礼を言えたらいいな・・・。


 【絢花side】
 「な、なんだか恥ずかしいですね・・・」
 「う、うん。そうだね」
 椿ちゃんが話し終わる頃には、二人とも顔がほんのり赤くなっていた。
 な、なんだか椿ちゃん目線の私、美化されすぎてない・・・?
 全然優しくないし、素敵な人間でもないよ・・・。
 椿ちゃんに褒められて、くすぐったい。
 「改めて、お礼を言わせてください。ありがとうございました」
 「ううん!椿ちゃんこそ、私と友だちになってくれてありがとう!」
 お互いにお礼を言い合って、そして二人一緒に照れた。
 こんな素敵な子と友だちになれるなんて、過去の私、グッジョブ!
 アナウンスで玉入れの出場者は集合するように指示があったので、集合場所に向かう。
 去り際、椿ちゃんに「応援してますね!絢花ちゃん、ファイトです!」といってもらったのでもう一度、ありがとうを伝えて来た。
 椿ちゃんに応援してもらえるなんて、今なら私一人で百個くらいカゴに玉を入れれそう。
 よーし、頑張るぞ!


 なんて意気込んで臨んだ(のぞんだ)玉入れ。
 圧勝とまではいかなくても、無事に一位を獲得することができた。