「うぇっ!?」
 なにげに、ずっと訊けてなかったんだよね。
 なかなか、いいタイミングがなかったと言いますか・・・。
 突然の私の問いかけに、椿ちゃんは驚いたような声を漏らす。
 そんなにおかしなこと訊いちゃったかな?
 「ええっと・・・。本当に些細なことなんですけど・・・」
 「うん」
 顔を少し赤く染めながらも、椿ちゃんは一つ一つ質問に答えてくれた。
 SNSアプリのアイコンに生け花の写真を使うくらい、椿ちゃんはお花のことが好きだそうで。
 私たちが一年生のときのある日・・・。


 【椿side】
 私は、昔から人見知りで、自分の意見を伝えることが苦手でした。
 嫌なこともなかなか伝えられず、誰かに注意するなんてもってのほか。
 もし何か不満に思うことがあっても我慢して見ないふりをする、そういうことがいつしか私の当たり前になっていました。
 だから、あの日もいつものように何も言えませんでした。

 『えー、それヤバくね!?』
 『流石に嘘だろ!』
 『いやいや、これがマジなんだって!いや、俺も実際に見てなきゃ信じられないんだけどさ』
 一日の授業が全て終了し、空も茜色に染められていくころ。
 多くの生徒が、家に帰ろうと校門に向かって歩いています。
 そんな中、ネクタイの色からして一つ年上の男子生徒さん三人が、楽しそうに話していました。
 彼らの足元には、倒れた横長の植物プランターと中から出てしまった土、そして花が。
 あの方たちが倒したのかは定かではありませんが、誰もそれを気にしていないことは明らかです。
 すぐに直しに行きたいのですが、生憎私は同じくお花好き仲間の用務員のおじいさんとおしゃべりをしているところでした。
 考えすぎだとは思いますが、話が盛り上がっている中話の腰を折ってしまうのは悪い気がしましたし、何より私があの三名に話しかけられるとは思えません。
 仕方ない、話が終わって、彼らが帰るまで待とう。
 そう自分に言い聞かせました。
 ふと、倒れた花を一人の足が踏みつけるのが目に入ってしまいます。
 周りは、誰も気にしていない様子ですし、もちろん彼らも気づいていない。
 頼みの綱の、おじいさんも気がついていません。
 それでも、私には勇気がありませんでした。
 自分の不甲斐なさに失望していたそのとき。
 『あの。すみません』
 『はい?何?』
 私と同じ学年の女の子が彼らに話しかけに行くのが見えました。