「めちゃくちゃ見たいんだけど!」
 「確かに、真白と黒江足速いしな・・・」
 「いいんじゃね?」
 男女どちらからも不満の声はあがらず、みんなその案に乗り気だ。
 ・・・ただ一人を除いては。
 魁吏くんは声を荒らげての拒否こそしていないが、その顔は不機嫌一色に染まっている。
 「反対はいないみたいだね。じゃあ、決まりかな」
 晶くんがそれを言ったのを合図に、クラスはわぁっと歓声をあげる。
 歓声をあげてるのは主に女の子たちだけど。
 黒板に二人の名前を書くと、魁吏くんの眉間に刻まれたしわが少し深くなった気がした。
 うわぁ・・・見ないふり見ないふり。
 はっきりと断らないほうが悪いよね!
 それに、推薦したのは私じゃないから魁吏くんは私に文句言ってこないはずだし!
 うんうん、大丈夫大丈夫!
 それからも晶くんの進行のもと、着々と出場種目は決まっていく。
 私は玉入れと、後もう一つは走らなくていい綱引きを選んだ。
 ちなみに、椿ちゃんは障害物競争と私と同じく綱引き。
 椿ちゃん、運動神経よさそうだったもんね。
 障害物競争だなんてすごいなぁ・・・。
 晶くんはチーム対抗リレーと騎馬戦、そして魁吏くんはチーム対抗リレーと借り物競争に決まった。
 一通り全ての出場者が決まると、先生は私に一枚の用紙を渡す。
 「これ、記入して職員室に持ってきてくれ」
 「わかりました」
 丁度そのタイミングでチャイムがなって、授業は終わりを迎えた。


 学校が終わって、シェアハウスまで一人で帰る。
 椿ちゃんの家も、方向は同じみたいだったけど一緒に帰るわけにはいかない。
 故意ではないとはいえ、魁吏くんと晶くんとシェアハウスしてるだなんてバレちゃったら私の学校生活は終わりだ。
 今日の学級会でも、あらためて二人の人気を再認識させられた。
 なかなかないと思うよ、学級会での黄色い歓声なんて。
 「ただいま〜・・・」
 返事は帰ってこない。
 もしかして、私が一番乗り?
 職員室によってから帰ってきたから、もうどっちかは帰ってきてると思ってたんだけど。
 あれ、これって魁吏くんの靴?
 自分の部屋にいるのかな?
 二階にはあがらずに、私は共有スペースに入った。
 共有スペースは、電気がついてる。
 魁吏くんがつけて、そのまま消し忘れちゃったとか?
 特になんにも考えずに、そのまま部屋の奥に進んでいく。
 「・・・・・・!」