里穂曰く、コンタクトに変えるだけじゃなくて髪型も変えたほうがいいらしい。
 ヘアセットとかはよくわからないし得意でもない私に里穂が普段の髪型で勧められたのは、髪を二つに結わずにおろすもの。
 だから、長い期間続けてきたこの低い位置のツインテールともさようなら。
 胸まであった髪を、肩の上くらいの長さに切ることも決めた。
 美容師のきれいなお姉さんに髪を切ってもらったあとに簡単なヘアセットもしてもらって、そのまま近くの喫茶店に入る。
 向かいの席に座って抹茶ラテを飲んでいる里穂に、この前黒江さん改め魁吏くんとのあいだで起こったことを相談した。
 当事者の私にはわからなかったけど、色々経験の豊富な里穂なら魁吏くんの行動の心理がわかるかと思って。
 「私、魁吏くんをずっと苗字プラスさんで呼んでたのってまずいことだったのかなぁ・・・?」
 「・・・なるほどね~」
 何かを理解した里穂は、楽しそうに笑った。
 私にはわからなかった何かがわかったのかな?
 さすが、里穂に相談してみてよかった。
 なんだか、あれから何故かドキドキしちゃってまともに魁吏くんの顔を見れなかったし。
 理由を早く解明したかったんだよね。
 「なんでかわかったの?教えて・・・」
 「無理」
 教えて、といったらそれに被せるように即行で里穂は拒否した。
 「え、どうして?」
 「絢花が自分で気づかないと意味がないからよ」
 「?」
 私が、自分で気づかないと意味がない?
 どういうこと?
 里穂から聞くんじゃだめなの?
 「それに、私がここで言ったら黒江が可哀想だしね。それにしても、黒江も本当不器用だよねぇ。自分の気持ちに気づいてるのかもわからないし。鈍感な人間が二人もいるなんて真白も大変」
 「???」
 ますます意味がわからなくなってきたぞ。
 魁吏くんが可哀想で、不器用で、鈍感が二人で、晶くんが大変?
 里穂の言ってることも魁吏くんの言動も理解できないなんて、私は本当に日本語で話しているのだろうか。
 もしかしたら、別の星から墜落(ついらく)して記憶をなくしてしまった宇宙人だったりして。
 ううん、私のお父さんもお母さんも日本人なはず・・・だ。
 だったらなんでわからないんだろう。
 「ま、絢花も黒江ももう少し鋭くなったらいいんじゃない?」
 結局、私の疑問はなくならず。
 むしろ新たな謎が増えてしまっただけなのだった。